Vol.5金融機関が注目する「アルムナイ」とのビジネス連携の可能性

2023.11.19 04:50
#金融機関に広がる「アルムナイ」
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アルムナイに特化したサービスを提供する専門家が贈るシリーズ「#金融機関に広がる「アルムナイ」~退職者は社外の人的資本~」。前回は、企業が採用ブランディングの一環として、アルムナイに取り組む理由について事例を交えて説明した。今回は、ビジネス連携とアルムナイの関係について解説する。



金融機関で退職者とのつながりを重視する動きが広がっています。金融機関側のメリットとしてわかりやすい「再雇用」や「採用ブランディング」だけではなく、注目を集めているのが、アルムナイとの「ビジネス連携」です。


予測不可能なVUCA(ブーカ)の時代と言われる現代、企業を取り巻く環境は年々、複雑性を増し、将来の予測は極めて困難になっています。そのなかで企業が継続的に成長するためには、既存事業を深化させて時代にマッチした事業へと発展させることと、新たなイノベーションを生み出す新規事業を創発することが重要になってきます。
このようなチャレンジに対し、近年注目を集めているのが「アルムナイとのビジネス連携」です。同質性の高い自社の人材だけではなく、外の世界を知るアルムナイとの連携によって、これまでにない多角的な視点が生まれ、創造的なアイディアを創出できることが期待されています。
企業がアルムナイとのビジネス連携を通してどのような価値創出ができるのか。
 ①オープンイノベーション
 ②ビジネスパートナー
 ③出資関係
以上の観点から具体例な事例を解説します。


<オープンイノベーション>
変化の早いビジネス環境や顧客ニーズの多様化に伴い、商品やサービスのライフサイクルが短くなっています。日々変化する顧客ニーズに対応し持続的な成長を遂げるために、企業が外部の企業や人材と連携し新規事業を立ち上げるオープンイノベーションの重要性が高まっています。


東京都に本社を置くシステムインテグレーターのA社は、より創造的で革新的なアイディアを生み出すために、新規事業開発のためのアイディア出しを、社員だけではなくアルムナイを交えて実施しています。
これまでにない新たな視点で事業を創発する際、社内人材は、目指すビジョンやリソースに対する共通認識を持つ強みがある反面、考え方やアイディアなどが同質化してしまうリスクがあります。一方、アルムナイには、古巣の社風や文化を理解しつつも、異なる環境で得た経験やノウハウを掛け合わせ広い視点から考えられる強みがあります。
実際、本イベントに参加した社員からは、「社内だけでは想像できなかった新しい視点でのアドバイスが聞けて、新規事業を創出する上で大きなヒントを得られた」と、アルムナイと一緒の取り組みに対して前向きな発言がありました。このように、アルムナイは社内と社外の両方の視点を併せ持つ貴重な外部人材であり、企業がオープンイノベーションを推進する上で最適なパートナーになり得るのです。


<ビジネスパートナー>
ビジネスの成功を左右する上で、最も重要な要素として挙げられるのが適切なビジネスパートナーを見つけることです。近年、アルムナイとパートナーシップを組み、新しい商品やサービスを立ち上げるために協業する事例が増えています。


国内大手損害保険会社のひとつである三井住友海上火災保険は、アルムナイと連携協定を結び、共に地方創生の取り組みを行っています。同社は、地方創生を推進する上で「地方自治体との関係構築」について課題感を抱いていました。そこに在籍時代に地方自治体との幅広いコネクションを培っていたアルムナイがサポート役として介入し、包括連携協定締結に向けた支援をしています。アルムナイは、これまで見過ごされてきた「信頼できるビジネスパートナー」としても、益々、存在感を高めています。


<出資関係>
キャリア選択の変化や働き方の多様化により、起業を志す人々が増えています。同時に、そのような志を持ったアルムナイと退職後も関係を維持し、出資関係に至るケースも相次いでいます。
2021年4月、大手総合商社の双日は、アルムナイが設立したスタートアップ企業に出資し、初めてアルムナイへの出資案件を実現させました。常務執行役員の山口幸一氏は、「双日はアントレプレナーシップ(起業家精神)を持つ社員を支援している」と明言し、退社して自身の事業を立ち上げチャレンジをしているアルムナイを全面的に支援することをプレスリリースで公表しています。すでにある程度の相互理解があるうえ、一緒に働いた経験があるアルムナイだからこそ、そこには一定の信頼関係があると言えます。


このように、退職後に社外で多様な経験を積んでいるアルムナイとのビジネス連携を通して、企業は競争力の維持・向上や新たな付加価値を創出することができ、結果的にそれが企業価値向上に寄与します。


次回は、アルムナイと教育支援について解説します。

金森亜城
執筆者:金森亜城
プロフィール:株式会社ハッカズーク コンサル・CS
リクルート、日清食品において営業・営業企画を経験。ハッカズーク参画後、キャリアを活かして営業からCS・コンサルまで一貫してお客さまに寄り添いスピーディに提案を行う。海外留学の経験もあり英語でのビジネスコミュニケーションも可能。

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