金融庁、初の代理店登録取り消し、ビッグモーターGに対して 再建への道筋「極めて困難」

2023.11.24 19:29
金融庁 保険・共済 行政処分
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金融庁は11月24日、中古車販売大手のビッグモーター(BM、東京都)をはじめとしたBMグループ3社に対して、損害保険代理店登録の取り消し処分を発出した。ガバナンスの欠如と適切な保険募集体制の整備に不備があったと認め、「再建への道筋は極めて困難」と結論付けた。3社は同月30日をもって登録取り消しとなり、12月1日以降は自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)や任意の自動車保険などの契約を結べなくなる。既契約は、他の代理店や損害保険会社に引き継がれる。


異例の処分、過去の例「見当たらず」


極めて異例の処分だ。保険業法に基づく今回の処分は、「(過去にさかのぼっても)保険代理店としての(登録)取り消しは見当たらなかった」(同庁)という。処分の理由については、適切な保険募集管理体制を実現するための人的リソースがなく、全ての損害保険会社が代理店委託契約を解約したため、体制整備への支援が期待できないことを挙げた。


 同庁は、処分に当たり二つの問題点を指摘した。一つは経営管理態勢(ガバナンス)だ。経営管理態勢の整備は、「保険代理店業務を適切に進行する上での大前提」(同庁)。だが、BM社は正常化させるための取り組みを怠っていた。2016年10月~23年7月までの7年間で、取締役会の開催が確認されたのは20年12月の1回のみで、経営管理における重要な規程も2015年9月以降、改定されずに放置されていた。いびつな評価制度・給与体系に耐えられず、社員が大量離職するなかで、新たに採用した社員への保険募集に関する質の高い教育・研修も行われていなかった。


 もう一つの問題点は、保険募集体制整備の不備だ。2020年以降、新型コロナウイルスの感染拡大による中古車販売の苦境を契機に、BMの経営陣は、収益を生まない事業の排除や人的リソースの見直しに着手。苦情対応コールセンター事業の廃止や、同社保険部による各店舗への保険募集に関する指導・教育に向けた取り組みの中止など、利益至上主義へとかじを切った。その結果、BMグループにおいて、組織的な保険募集人への教育・管理・指導が実施されない状況となっていた。


社員や下請けに保険加入迫ったケースも


 同庁の立ち入り検査では、不適切な事例が多数見受けられた。例えば、短期間で契約手続きをした148件の契約のうち122件は、募集人が網羅的な重要事項の説明を行っていなかった。保険加入を条件に車両価格を割り引くといった、保険業法で禁止されている「特別利益の提供」を行ったケースもあったようだ。そのほか、募集人が店長から圧力を受けて加入させられたケースに加え、下請け会社が同Gによる圧力で保険加入させられたケースも散見された。


今回の処分による、同Gで契約した顧客への影響については、他の代理店扱いや保険会社の直接取り扱いに切り替わっていることを踏まえ、「契約維持や更改に関して、現状お客様への不利益が発生することはない」(関東財務局)という。今回の事案を踏まえ、関東財務局は「代理店監督の高度化に努めていきたい」と述べた。

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