【推薦図書】『マネー・チェンジャーズ』(アーサー・ヘイリー著)
2023.11.24 04:30
【推薦者】三菱UFJニコス社長・角田典彦氏
金融マンとなったきっかけの一冊
長らく紙では絶版でしたが、kindleで復刻した「私が金融マンを目指したきっかけの1つとなった本」です。著者のアーサー・ヘイリーは、1960~90年代に活躍された米国のベストセラー作家で、綿密な業界取材で、本作の銀行の他、自動車やエネルギー業界等を舞台としたビジネス小説の傑作を多数執筆されています。わが国でいえば、山崎豊子氏や池井戸潤氏の先駆者です。
本作は、1975年の刊行ですが、クレジットカードの不正利用や銀行支店での現金紛失、都市再開発案件、新興急成長企業への大型融資、利益相反など、現在でも色あせないテーマ設定と、脇役の端々まで魅力的なキャラクターが織り成す群像劇、絶妙のストーリーテリングが優れた小説です。
本題の私のきっかけとなった場面は、物語の終盤、主人公が役員を務める銀行が取り付け騒動という窮地に直面した際、「お客様本位に徹した説得」で、お客様の信頼を獲得し急場を見事に解決する、というクライマックスシーンです。主人公のとてもフェアな格好良さに心を打たれたことが、後に金融マンとなるきっかけになったことは間違いありません。
かなりエンタメ寄りですが、最後まで目を離せないページターナーであることは請け合いです。
(Amazon Kindle版/グーテンベルグ21社、税込み1287円)