【推薦図書】『社会的共通資本』(宇沢弘文著)

2023.11.10 04:30
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社会的共通資本(宇沢弘文著)

【推薦者】日本銀行金融機構局長・中村康治氏
 ESGに関する先駆的著作


本書が刊行されて約四半世紀が過ぎようとしている。電子書籍として手軽に利用できるようになった本書を読み直してみた。
 本書でトピックの一つとして取り上げられている地球環境問題への対応は、ようやくグローバルな政策アジェンダとして、官民挙げて対応が取られている。本書は、地球環境問題だけではなく、農業、都市、教育、医療、金融制度も、社会的共通資本という概念で取り扱うことができると主張する。
 そして、著者は、社会的共通資本は、それぞれの分野における職業的専門家によって、専門的知見にもとづき、職業的規律にしたがって管理、運営されるものであると述べる。ESGという言葉がまだ人口に膾炙(かいしゃ)していなかった時代に、既にその重要な要素について考察を行っていた。
 著者は、当初、数理経済学者として新古典派成長論の基礎を築いたが、その後、すべての経済社会問題は、市場メカニズムで解決できるとする新古典派と決別する。社会主義・計画経済にも失望した著者がたどり着いた概念が、社会的共通資本である。
 著者が存命であるならば、現在の様々な社会経済問題に対してどのような見解を示したのであろうか。


(岩波新書、税込み968円)

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