【推薦図書】『モデルナ 万年赤字企業が、世界を変えるまで』(ピーター・ロフタス著、柴田さとみ訳)
2023.11.03 04:30
【推薦者】みずほフィナンシャルグループ 取締役・平間 久顕氏
イノベーション「ともに挑む」
今年のノーベル生理学・医学賞は、米ペンシルベニア大のカリコ教授とワイスマン教授が受賞した。メッセンジャーRNAの医薬品応用、特に新型コロナウイルスワクチンの早期実現につながる基礎研究が評価された。その発明を事業化し、常識を覆すスピードで極めて有効性の高いワクチンを開発した企業の1社、それがつい最近まで無名のバイオベンチャー企業だったモデルナである。
本書は、ウォール・ストリート・ジャーナル紙記者の取材による、モデルナの創業から10年余り、その闘いの軌跡である。科学者と起業家とベンチャーキャピタルと医者という4人の共同創業者のもと、未知の技術に賭ける優れた研究者たち、未来の成功を信じて突き進む経営陣が集結する。「新世代の革新的医薬品を患者に提供すること」をミッションとして、数々の困難を乗り越えながら、大胆で妥協なき企業カルチャーが醸成されていく。やがて、まだ一つも自社製品を持たないスタートアップ企業に投資家が応えて株式上場を果たす。そして、猛威を振るうパンデミックに、米政府もモデルナのもつ可能性に賭けた。こうして、ともに挑み、ワープ・スピードで結実したワクチンが、人々の命を救ったのである。
(草思社、税込み2530円)