【推薦図書】『サステナブルファイナンス最前線』(水口剛・高田英樹編著)
2023.10.27 04:30
【推薦者】東和銀行取締役常務執行役員・鈴木信一郎氏
グローバル課題への真摯な取り組み
10月初旬の気象庁の発表によると、今年9月の日本の平均気温は平年と比べて2.6度ほど高くなり、7、8月に続いて統計を取り始めてからの125年間で最も高くなったという。多くの国民が地球温暖化の深刻さを実感した夏であったろうと思っている。
本書は、このような気候変動問題をはじめとして、環境・社会課題など広範囲にわたり、また急速にその奥行きを広げつつあるサステナブルファイナンスについて、歴史的経緯から近未来の展望、さらには情報開示面やサステナブルファイナンス批判に対する考察を含めて、詳細にアップデートしている。投融資判断の第三の軸としての「インパクト」が測定可能な形で確立されれば、金融におけるパラダイムの転換となる。個人的には、こうしたパラダイムシフトに地域金融の現場から少しでも関与できれば幸いである。
サステナブルファイナンス関連の展開として、当行は2019年4月に「東和銀行SDGs宣言」を制定し、取引先顧客の「SDGs宣言」策定支援や各種ファイナンスを提供している。本書は各地域金融機関が自行庫の現状を総括し当面の方向性を整理するうえでもタイムリーな出版と思われる。
(金融財政事情研究会、税込み3300円)