農林中金アカデミー、2021年度は3研修新設、リスク管理高度化など
2021.02.05 05:00「農林中金アカデミー、2021年度は3研修新設、リスク管理高度化など」ニュースの要約
・農林中金アカデミーは21年度、JA系統組織向けにリスク管理高度化など3つの新研修を設立
・新設研修は、「研修企画担当者研修」「リスク管理研修」「資産形成サポートプログラム(SP)フォーラム講師育成研修」の3つ
・研修は、JAバンクの中期戦略実践や資産形成業務の県域展開を支援する内容
・経営層向け研修はオンラインに移行し、短縮型のクールで提供しつつ、個別指導の柔軟な日程も組む
JA系統組織の人材育成を担う農林中金アカデミーは2021年度、リスク管理高度化など3研修を新設する。コロナ禍を踏まえ、20年度はオンライン形式の研修を中心とした。一部に集合研修の方が効果的なものもあったため、アフターコロナを見据え、21年度は「対面と非対面を効果的に組み合わせ、ハイブリッド型研修モデルの構築・定着を目指す」(内海康夫研修企画部長)考え。 同アカデミーは、農林中央金庫の100%子会社として1981年5月に設立した。全国のJAや県域組織の役職員に対し、集合・通信研修や検定試験、講師派遣などを行う。
主に県信用農業協同組合連合会向けの全国研修は、JAバンク中期戦略の実践に寄与する3研修を新設。一つ目は「研修企画担当者研修(信共連携)」。信用・共済事業の一体運営を進めるため、信農連と共済県本部の研修企画担当者向けに人材育成をテーマにする。
二つ目は「リスク管理研修」。農林中金は奨励金利率の引き下げや預け金に上限を設定。そのため、JAや信農連は自ら有価証券運用を強化する必要があり、リスク管理の高度化を後押しする狙い。
三つ目は「資産形成サポートプログラム(SP)フォーラム講師育成研修」。農林中金が指導する資産形成SPは、証券会社出身の指導員が1JAに平均3人入り、3カ月間、同行訪問などを通じて実践的な提案スキルを教えるもの。ただ、導入から一定期間が経過し、定着が図られていないJAもでてきた。これらのJAをフォローする信農連職員を育成し、資産形成業務の県域展開を進めていく。
JAや信農連の経営層(専務や常務)向け研修は、具体的なコンテンツ提供と実践力強化に軸足を置く。これまでの集合研修(3日間×3クール)をオンラインに移行し、1クールを2日間に短縮。その分、事前の動画視聴で理解を促す。専門家による個別指導も柔軟な日程を組み、受講しやすくする。一方、他の参加者との交流や情報交換には課題が残り、「コロナ禍の感染拡大状況を見極めながら、集合研修の再開も検討していく」(内海部長)としている。
また、情報交換や相互研さんを主な目的とする組合長・理事長向けセミナー(2日間)、グループワークが主体の支店長・中堅職員向けブロック・シンポジウム(1日間)はそれぞれ開催を見送る。
ニッキンオンライン編集デスクの目
農林中金アカデミーにおける研修体系の変遷は、JA系統組織が直面してきた経営課題を映し出している。1981年 の設立当初、研修の主眼は預貸業務の基礎知識習得や共済商品の販売スキル向上にあった。しかし、金融自由化の進展と農業・農村を取り巻く環境変化によって求められる人材像は大きく変化している。
リスク管理研修の新設は、JA系統組織における金融リスク管理の高度化の反映と言えるだろう。従来のリスク管理は信用リスクに焦点を当てていた。しかし、2000年 代に入ると市場リスクや流動性リスク、オペレーショナルリスクなど、管理すべきリスクが多様化してきた。
資産形成サポートプログラム講師育成研修の導入背景には、組合員・利用者の金融ニーズの変化がある。JAの金融業務は農業関連融資と定期貯金が中心であった。しかし、高齢化の進展や資産継承ニーズの高まりにより資産形成商品のニーズが増加している。
研修企画担当者研修の新設は、人材育成の体系化への取り組みとして注目されるだろう。若手職員の早期戦力化と専門人材の育成はJA系統組織の大きな課題だ。各組織における効果的な研修体系の構築も求められている。