マーケット・トレンド(金利) 円安・物価上昇のシナリオ
2023.10.17 04:25
為替レートが1ドル150円近くから、なかなか円高方向に戻らない。政府は、10月3日に為替介入に動いた模様であるが、米長期金利がじりじりと上昇を続けていて、ドル高圧力は根強い。
FRBは、長期金利上昇が1回分の利上げに相当するとして、年内利上げを打ち止めにする可能性もある。米景気が堅調で、これで利上げ終了となれば、為替はドル買いとなるだろう。
仮に、この流れを変えるとすれば、日銀が目標達成を宣言し、マイナス金利を解除するときだろう。植田総裁は、賃上げを注視する姿勢を色濃くしている。
来春の春闘の集中回答日は3月半ばだ。その直後に日銀会合はある。少し様子をみる可能性もあるから、3月会合の次の4月という線もある。
半年先のマイナス金利解除が濃厚となれば、円高は進むだろうか。それは明確ではない。もしも、植田総裁がマイナス金利解除後も、政策金利を低位にするという時間軸効果をアピールすれば、日本の長期金利はそれほど上昇せず、円高は限定的になる。
そのとき、輸入物価の下落圧力は弱くなる。日本の物価上昇率はそれほど低下しない。利上げ後も円安が続き、2024年度にかけて2%を上回る物価上昇を継続するシナリオになる。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏