苦情に学べ 欠かせぬ「金融機関本位」の脱却

2023.10.07 04:30
苦情に学べ
メール 印刷 Facebook X LINE はてなブックマーク
苦情に学べ

みなさんは、日々の投資信託・生命保険など(以下「リスク性商品」)の営業活動で、苦情を受けたことはあるだろうか。長年、リスク性商品の販売をしていれば、苦情を受けることもあっただろう。
 そのとき、こんなことを思ったことはないだろうか。「自分は丁寧かつちゃんと説明したのに」「自分は研修通りにお話ししたのに」――。
 みなさんが適切と思っていたとしても、実際に苦情は発生している。直近でもリスク性商品の販売にかかる不適切な顧客対応により、行政処分が行われている。
 リスク性商品の販売が解禁されてから、約25年になるにもかかわらず、こうした苦情が無くならないのはなぜか。原因は、過去の苦情や金融ADR(裁判外紛争解決手続き)の事案を分析すれば、おのずと見えてくる。
 こうして判明した苦情やトラブルの原因・要因からわれわれが学べることは多い。その結果、顧客の苦情を減らすことができるのではないか。
 本稿では個別事案の分析を通じて、苦情から学べることについて述べてみたい。
 まずは、販売する金融機関全体としての課題、販売する行職員の課題、顧客側の課題に分けて、マクロ的観点から分析してみたい。
 金融機関としての課題としては、ひとえに収益ありきの「金融機関本位の業務運営」が挙げられる。預貸利益の減少に伴い、その減少を補うためにリスク性商品の販売を促進・推進するといったことが行われてきたことであろう。
 また、金融機関内に、いわゆるノルマ的なものがあり、ノルマ的なことを達成しなければいけない空気感を生み出し「まずは販売目標の達成ありき」といった同調圧力を生み出していることが、苦情やトラブルにつながる大きな原因・要因ではないか。
 次に、販売する行職員の課題としては、商品知識や販売時のプロセス、特に説明の仕方にあると考えられる。
 顧客にリスク性商品を販売するには、その商品について相応に理解していなければならない。しかし、その内容を十二分に理解できず、かつ勉強する時間が足りないため、不十分な商品知識のまま販売することで、苦情に至るケースも多いと聞く。もちろん、行職員の説明スキル不足や情報の非対称性も課題もあると考えられる。
 当然、顧客側にも課題はあり、例えば、「知らないと思われたくない」「金融機関職員であれば大丈夫」「分からないけど聞くのが恥ずかしい」といった点などがあり、顧客の金融知識の向上も必要である。
 今後は個別事例を通じて苦情から学べることについて具体的に述べてみたい。


【金融監査コンプライアンス研究所代表取締役・宇佐美豊氏】

すべての記事は有料会員で!
無料会員に登録いただけますと1ヵ⽉間無料で有料会員向け記事がご覧いただけます。

有料会員の申し込み 無料会員でのご登録
メール 印刷 Facebook X LINE はてなブックマーク

関連キーワード

苦情に学べ

おすすめ

アクセスランキング(過去1週間)