【Discovery 専門家に聞く】ミドル・シニア世代こそ兼業・副業を、地域金融機関に適した「協同労働」

2023.09.09 04:45
インタビュー Discovery
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日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト・小島明子氏

日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト・小島明子氏


ミドル・シニア人材の活躍推進が問われている。日本総合研究所が高学歴の中高年男性を対象に行った調査では、約半数が定年後も可能な限り仕事を続けていたいと希望。加えて、自己成長ができる仕事や、やりがいのある仕事をしたいと考えている人も多い。このような人材の経験やスキルを生かす手立てとして、近年「協同労働」が注目されている。地域課題解決に取り組む例も多いため、地域金融機関の行職員には特になじみやすい働き方といえる。企業における多様な人材の活躍推進に詳しい、日本総研スペシャリストの小島明子氏に話を聞いた。


◆地域課題と向き合う
 協同労働は、2022年10月に施行された労働者協同組合法を法的根拠とする新しい働き方だ。一人ひとりが出資し、組合員となって、対等な立場で経営に参画することが特徴。株式会社やNPO法人とも異なる新しい形態である。非営利組織でありながら最低賃金が適用され、剰余金が発生した際には、組合に従事した程度に応じて配当を行う。  各組合員の事情に合わせて柔軟に働けることも魅力の一つだ。具体的な事業の内容としては、介護や福祉、子育てなどの地域課題を解決するものが多い。  日本総研の調査では、企業に勤務しながら副業や兼業を望むミドル・シニア人材が半数に上った。一方、企業側もそうした人材を労働者協同組合のような外部組織に紹介することで、事業以外の社会貢献への道を開くことができる。


◆金融スキルは役立つ
 協同労働の形態で事業を続けていくためには、安定した収入を得てメンバーに賃金を支払う必要がある。運営を軌道にのせるためには、お金周りの基本的な知識・管理、さらには経営の知識などが欠かせない。
 そういう意味では、金融界のミドル・シニア人材はまさに最適な人材だ。特に「地域貢献」を大きな目的に据えている地域金融機関の行職員は、仕事の経験を活かして、参画できるのではないか。
 こうした話を金融機関の方々にすると、「自分のキャリアの強みが分からない」と語る方が多い。長らくプロフェッショナルな集団の中にいると、自分の持つスキルが社会にどれだけ有益かが分かりにくくなる面がある。
 だが外部からみると、金融界の知識・経験・人脈は非常に役立つものであると感じる。金融界のミドル・シニア人材がこれらを生かさないのはもったいない。


◆居場所の分散が大切
 兼業や副業をすることは、自分の居場所を新たにつくることでもある。ミドル・シニア人材の多くは、仕事と家庭という二つの居場所がメインとなっているが、そこに自分が得意なことを生かせる場所を加えることは有益だ。
 新しい居場所を作るといっても、無理に自分を変える必要はない。今までしてきたことを深掘りしてもいいし、それを別の新しい分野と掛け合わせて生かすこともできる。
 兼業・副業には、働き方の自由度が高いというメリットもある。毎日の生活の中に非日常を取り入れる感覚で、遊びのような部分を持ちつつ働くことが可能だ。役職定年の後にモチベーションが低下した男性が4割近くいることが、日本総研の調査で明らかになっている。企業がこの層に副業・兼業を認めることで、ミドル・シニア人材のモチベーションを保つことにもなるのではないか。
 現役時代は活躍していても、定年後は何もすることがなくなり、元気がなくなる方がいる。定年前から兼業・副業を経験し、定年後も社会とのつながりを持ち続けるための居場所を作ることは、人手不足の課題を抱える社会全体にとってもメリットとなるはずだ。

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