【推薦図書】『幸福の測定 ウェルビーイングを理解する』(鶴見哲也、藤井秀道、馬奈木俊介著)
2023.09.01 04:45
【推薦者】信金中央金庫常務理事・室谷武彦氏
ウェルビーイングの「見える化」のその先に
ウェルビーイングの視点は、コロナ禍における価値観の変化などにより、今まさに重要視されており、政府も2021年より毎年、骨太の方針のなかで、ウェルビーイング指標の導入等を継続的に取り上げられている。本書は、何を「幸せ」と感じるのかはもちろん人それぞれだが、「共通の傾向」があることを学術的に示し、その幸せの決定要因を追求している。
世界で最も幸福と言われるフィンランドと、先進国で最低水準の幸福度とされる日本の比較が興味深い。フィンランドは、人とのつながり(ノーマライゼーションの理念の浸透)、仕事と生活のバランス・余暇(趣味など課外活動に積極的)、自然とのつながり(環境配慮行動を重視)などあらゆる観点で、日本よりはるかに優れている。
また、本書では、国内30万人アンケートにより、幸福度について、都道府県・都市別など詳細にランキング比較するなど見える化しており、各地域に適した政策提言についても示唆を与えている。
なお、ウェルビーイングは、SDGsが「地球上の誰一人取り残さない」、経済・社会・環境の3つのバランスがとれた社会を目指すものであることから、今後SDGsを達成するための価値観の重要な基準となると改めて感じさせられた。
(中央経済社、税込み2860円)