いまさら聞けない時事用語 PBR1倍割れ
2023.08.06 04:30
PBRは「Price Book-value Ratio」の略で、日本語では株価純資産倍率という。現在の株価が割高か割安かを見極める代表的な指標の一つ。株価が「1株当たり純資産(BPS)」の何倍まで買われているかを示すもので、株価をBPSで割って算出する。この数値が高いと株価が割高、低いと割安と判断できる。
BPSは、会社が解散した場合に株主の手元に残る価値を示す。そのため、企業の帳簿上の解散価値とみなすこともできる。数値が1倍を下回ると、理論上は会社を解散して純資産を分配した方が株主が得をする水準となるため、1倍は株価が底値であることを示す目安とされてきた。
だが、日本は欧米に比べてPBRが1倍割れの企業が多い。銀行株のように1倍未満が常態化している業態もあり、1倍割れを単純に割安のサインとみなすのは早計だ。2022年7月時点で米国はS&P500構成銘柄の89%、欧州はSTOXX600構成銘柄の75%、日本はTOPIX500構成銘柄の57%がPBR1倍以上。つまり、日本は主要企業の約4割がPBR1倍未満であり、東証プライム市場全体では約5割、東証スタンダード市場では約6割にのぼる。
こうした現状を是正するため、東京証券取引所は3月末、上場企業に対して株価水準を引き上げるための具体策の開示を求めた。プライム市場とスタンダード市場に上場する約3300社が対象で、特にPBRが1倍を下回る企業にはその要因分析や改善計画の開示などの対応を要請した。
銀行界では既に一部で開示が始まっており、従来以上に資本収益性や株価を意識した経営が求められることになる。