【Discovery 専門家に聞く】X・Y世代が気になる「Z世代のSNS」

2023.08.05 04:45
インタビュー Discovery SNS
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廣瀬 涼(ひろせ りょう)静岡県出身、33歳。大学院博士課程を経て2019年、ニッセイ基礎研究所に入社。研究分野は消費文化、マーケティング、ブランド論、サブカルチャーなど。
廣瀬 涼(ひろせ りょう)静岡県出身、33歳。大学院博士課程を経て2019年、ニッセイ基礎研究所に入社。研究分野は消費文化、マーケティング、ブランド論、サブカルチャーなど。

ニッセイ基礎研究所 生活研究部 廣瀬 涼 研究員


Z世代は、一般的に1996~2012年に生まれた人たちを示す。かつてのX世代(1965~1980年)やY世代(1981~1995年)と同様に、若者文化を紹介する際に用いられるキーワードだ。生まれたときからインターネットが身近にあり、デジタルネイティブのはしりとも言われる。SNS(交流サイト)を駆使して情報収集する傾向が、他の世代よりも強いという指摘もある。著書に『あの新入社員はなぜ歓迎会に参加しないのか:Z世代を読み解く』があるニッセイ基礎研究所の廣瀬涼研究員(33)に全体感を聞いた。



スマートフォンを使った情報収集は日常となった
スマートフォンを使った情報収集は日常となった

――Z世代が注目される理由をどうみていますか。
 2020年の米国大統領選挙が一つのきっかけだ。Z世代の米国歌手、ビリー・アイリッシュ氏をはじめとしたアーティストやモデルなどが「若い世代の考えをもっと発信していこう」と声をあげた。上の世代は当初、その発信力を甘く見ていたが、拡散するスピードや影響力を後に実感することになった。一方、日本国内ではワイドショーなどを中心に「若者=Z世代」という言葉自体が注目され、主に消費行動の側面として捉えられたようだ。


――SNSを他の世代よりも活用している印象があります。
 SNSには誰かの経験や成功例が溢れており、その情報が受け手の思想や行動に影響を及ぼすケースがある。例えば就職では普遍的な企業へ入社し、定年まで勤め上げるという価値観が大きく揺らいでいる。理由は、SNS上で様々な価値観が可視化され、それが伝統的な仕事に対する考え方に疑問を持つきっかけとなったからだ。ユーチューバーなどの台頭で「好きなことでお金を稼ぐ」というビジネスモデルが、若者に魅力的な選択肢となっている。また、「何かよく分からないけど、お金を持っている人」の情報も拡散されている。「その人たちの言うとおりにすれば、成功するかもしれない」という楽観的な考え方を持つ者にとっては、それを崇拝する人からの称賛コメントや「成功するための10のポイント」など時間をかけずに答えが分かる記載があれば、引き寄せられる十分な要因となる。


「SNS検索」が浸透   
 ――「ググるよりも、タグる」という表現で傾向を分析していますが。
 ヤフーやグーグルなどの検索エンジンよりも、SNSのハッシュタグ(検索目印)で必要な情報にアプローチする方法だ。例えば「東京グルメ」というハッシュタグを入力し、表示される膨大な写真の中から、自らのイメージに近いものを選択していく。つまりSNS検索だ。タイムリーな情報を得られるため、店の混雑や電車の遅延状況なども検索している。


――SNSには信ぴょう性が疑われる情報も少なくないようです。
 おそらく正確性を求めておらず、即時的に「なんとなく分かる情報」が欲しいのではないか。ただ、多くの人の目に触れた情報に間違いがあれば、誰かが訂正してくれるケースもある。そもそも世の中には多くの情報があり、SNSで目に入ってしまう状態にある。情報の「活用」よりも「処理」の感覚に近い。


――ビジネスでZ世代を取り込むポイントは。
 SNSによって、小さい流行が多数存在している状態にあり、「今の大学生は」「新社会人は」など型に当てはめることが非常に難しい。ハッシュタグの種類や表示される情報の多さが関心度の表れとの見方もあるが、更新されるスピードが速く、ビジネスとして追いつくことは容易ではない。やはり共通の価値観に着目するのが効果的ではないか。例えばコロナ禍に学生時代を過ごした人は、修学旅行やサークル活動などを経験していない。こうした共通の経験をもとにした消費行動を見いだすべきだ。

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