【推薦図書】『生物多様性 「私」から考える進化・遺伝・生態系』(本川達雄著)
2023.07.28 04:45
【推薦者】みずほフィナンシャルグループ取締役・平間久顕氏
多様性には価値がある
生物多様性を巡って、最近改めて重要なイニシアティブの発信が相次いでいる。昨年のCOP15において「昆明・モントリオール生物多様性枠組」を採択、わが国も3月に「生物多様性国家戦略」を閣議決定し、2030年ネイチャーポジティブ実現に向けたロードマップが示され、金融業にも生物多様性の保全への貢献が求められている。
近い将来、鰻丼や天然マグロの寿司が食べられなくなるかもしれない。夏休みに心を癒してくれた里山が減っている。そんな話を聞くたびに何とかしなくてはと思うものの、どうしても人間の目線で語りがちである。生物多様性条約の前文に「締約国は生物の多様性が有する本源的な価値を意識して」という記述があり、その「本源的価値」とは何か。この問いについて、ナマコの研究者である本川博士が、生物学の射程を大きく拡げて解説した、異色の生命賛歌が本書である。
長い長い時をかけて生命は環境に適合し、生命と環境の絶妙な均衡ができ、多様な生物が互いに関係性をもちながら、生きるための営みを続けている。締めくくりに、博士が作詞作曲した「生物多様性おかげ音頭」の一節から。『ソレ 多様な生物 大事にするとは わたし自身を 大切にすること』。
(中公新書、税込み968円)