いまさら聞けない時事用語 名目金利と実質金利
2023.07.23 04:30
金利には「名目金利」と「実質金利」がある。前者は、物価の動きを一切考慮しない名目上の金利だ。それに対し、後者は物価上昇率を考慮して算出される実質的な金利を指す。
名目金利が年3%だとしても、その時に物価が2%上昇していれば、受け取る利子の価値は実質的には1%分しか増えていないことになる。つまり、実質金利は1%となる。企業や個人は、表向きの金利水準だけで借りるかどうかを判断するわけではなく、物価の動きも考えて行動するので、経済の動きを読み解くには実質金利に注目する必要がある。
2013年に日本銀行は「インフレ率を2%に高める」という目標を掲げた。デフレ経済から脱却して、景気を良くするためだが、実はもう一つ狙いがあった。それは、実質金利を引き下げて、企業の借入需要を増やすことだ。
例えば、名目金利が2%の場合、物価上昇率がマイナス2%のデフレ下では実質金利は4%になるので、企業の金利負担は重くなる。逆に、物価が2%上がるインフレ下では実質金利が0%となり、企業は設備投資に動きやすくなる。
借り入れだけでなく、預金金利にも同じことが言える。預金金利が年0.1%と低くても、物価が2%下がれば、預金者は実質的に1.9%の得をすることになる。日銀がゼロ金利政策やマイナス金利政策を導入して預金金利が歴史的低水準になっても、日本の国民が預貯金を好み続けた行動には、一定の経済合理性があったという見方もできる。
足元はどうか。物価が上がり始めた一方で、預金金利は低いままだ。この状態が続けば、実質的に国民の資産が目減りしていくリスクがある。国や金融機関が「貯蓄から投資」というスローガンを掲げて、国民の資産をインフレに強い投資信託や株式などに振り向けようとしている背景の一つには、こうした事情もあるのだろう。
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