【推薦図書】『測りすぎ なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?』(ジェリー・Z・ミュラー著、松本裕訳)
2023.07.07 04:45
【推薦者】武蔵大学副学長 教授・大野早苗氏
業績評価が組織をダメにする?
業績評価を求める世の中の風潮は強まる一方で、パフォーマンス測定は教育分野や医療分野、非営利組織などでも広がっている。ただし、活動の中にはパフォーマンス測定が容易なものと容易ではないものがある。しかも、パフォーマンス測定が困難な活動のほうが本質的かつ重要であったりする。業績評価が、測定しやすい特定の活動に関する数値情報に基づいて行われると、測定困難ではあるが重要な目標が犠牲となる。終(しま)いには測定基準の改ざんまで行われる。パフォーマンス測定が報酬や懲罰の基準として使われるようになると、問題はさらに深刻となる。
本書は、パフォーマンス測定が組織の機能不全につながることを様々な事例を紹介しながら解説している。筆者は決してパフォーマンス測定を否定しているわけではなく、うまくいくケースも説明している。しかし、創意工夫が求められるような活動には向かない。また、パフォーマンス測定に固執するあまり、測定に膨大なコストをかけ、より本質的な活動に資源が回らなくなってしまう可能性も指摘している。
小職もパフォーマンス測定に携わる機会があったが、その時に感じた釈然としない思いを本書は明瞭に言い当ててくれた。本末転倒な結末だけは回避したい。
(みすず書房、税込み3300円)
関連キーワード
おすすめ
アクセスランキング(過去1週間)
- MUFG、大谷翔平選手との契約が終了 ブランドパートナーとして6年間
- NTTドコモ、銀行業参入に結論出ず 前田社長「なんとか進めたい」
- 自民党、郵政民営化法など改正案 上乗せ規制の文言修正 「速やか」から「3年ごと検証」へ
- 地域金融機関、福利厚生支援に熱視線 職域基盤の構築見据え
- 信金、保証システム刷新へ 審査申し込みに紙不要
- MUFG、マイボトルの利用促進 ペットボトル1万4500本削減
- 常陽銀、手形帳などを等価買い戻し 法人決済デジタル化促進
- 高知銀、シニアへ業務委託拡大 人手不足解消に一手
- 富山信金、個人預金は「局地戦」で 支店が推進策企画
- NTTデータ、社長に鈴木副社長 金融畑の知見生かす