【推薦図書】『ガリア戦記』(カエサル著、近山金次訳)
2023.06.30 04:45
【推薦者】freee finance lab 代表取締役社長・小村充広氏
ガリア戦記…原典を読む
「原典に当たれ!」。都市銀行の商品開発担当だった平成の頃、ある先輩から繰り返し指導された。金融規制改革への対応やネット専業銀行の創設に際し、解説本だけに頼ることなく難解さに苦しみながらも銀行法、金融年鑑、郵便貯金法等そのものに目を通したことは、知識や認識の深さに加え何よりも原典を自分自信の目で確認したという自信と確信を得られたものである。
塩野七生著「ローマ人の物語」の読後に原典への衝動に駆られた。クライマックスの一つである紀元前58年~紀元前51年のローマ軍のガリア遠征に関する、指揮官ユリウス・カエサル自身による「ガリア戦記」だ。
それは「ガリアは全部で三つに分かれ、その一にはベルガエ人、二にはアクィーターニー人~」の有名な書き出しから始まる。なんという素っ気ない書き出しか。ただこの素っ気ない一文が読者を一気に引き込んでいく。付録の古代地図でベルガエを探しつつ…(ベルガエは現在のベルギーの起源)。
石碑に刻むように事実を淡々と記すカエサルの文章力は鳥肌が立つような感銘を与える。それはまた原典故に我々をその時代、そのガリアにいざなってくれるのである。
(岩波文庫、税込み1067円)