いまさら聞けない時事用語 銀行業高度化等会社
2023.06.18 04:30
銀行法では、銀行や銀行持ち株会社が子会社として持つことのできる会社の業務内容が制限されている。銀行が不慣れな新規事業に手を出して、母屋である銀行業務が傾くことになれば、預金者や融資先に迷惑が及ぶゆえの規制だ。同様の理由から、非金融系の企業に出資する際に、銀行は5%以下、銀行持ち株会社は15%以下の議決権しか取得・保有できない。
こうした規制を緩めて、銀行がフィンテック企業に対して出資・買収をしやすくしたのが、「銀行業高度化等会社」という法律上の子会社類型だ。2016年の銀行法改正で新設された。この呼称には、「本業である銀行業の高度化に役立つ業務であれば特例として認める」という監督官庁の意図が込められている。そのため、銀行は事前に申請書を提出し、金融庁の審査をパスしなければ、認可を得ることができない。
16年の法改正によって、地域の優れた産品をインターネット上で通信販売する「ECモール」の運営事業や、地域産品の販路を新たに開拓する「地域商社」事業などに進出する地域銀行が増えた。
さらに21年の法改正では、銀行業高度化等会社の業務範囲が拡大され、認可手続きも緩和された。その結果、デジタル広告やヘルスケア、ソーシャルビジネス、再生可能エネルギーの電力供給など、ユニークな業務を営む銀行子会社が増えている。
銀行界では、日本銀行によるマイナス金利政策導入を契機に非金融業務に進出する流れが強まっており、銀行業高度化等会社を巡る規制緩和がその流れを後押しする役割を果たしている。