【推薦図書】『天職』（秋元康/鈴木おさむ著）

【推薦者】全国労働金庫協会専務理事・西村良隆氏
　器にあわせて料理を作ることはしたくない

わずか二文字の書籍名、その下に並ぶ希代のクリエーターお二人の名前に引かれて、なにげなく本書を手に。クリエーター、創作者、製作者、作家等々、「作る」そして「生み出す」職業、ともすれば、「前例踏襲」を是としがちな私の生業とは対極とも言える存在。AKB48や坂道グループの総合プロデューサーとして名をはせる秋元康さん、そして、数々の印象的な番組などを手掛ける放送作家の鈴木おさむさん。
　秋元さんは、自らを「特別な才能があるわけではなく、運でここまできた人間」と、鈴木さんは、「一つうまくいくと次のハードル、ちょっと自分が飛びにくいハードルを用意されて、なんとかそこを飛んできただけ」と評します。きれいごとではない等身大のことばを私は信じます。
　その一方で、仕事、価値観に関することとして、器にあわせて料理を作ることはしたくない、ことを成すのに必要なのは設計図を書き変える人、仕事にならないことをやれ、負けを認めるほど道が開ける、などなど。日常のなかで、迷いを感じたとき、そっと背中を押してくれたり、視野を広げてくれたりする言葉が満載です。
　忙しい日々の中でも、たまには少しだけ立ち止まり、気楽に目を通していただきたい一冊です。

（朝日新書、税込み836円）