【推薦図書】『防衛事務次官 冷や汗日記』(黒江哲郎著)
2023.06.02 04:45
【推薦者】財務省主計局総務課長・八幡道典氏
気楽に学べる防衛政策と“仕事論”
ウクライナ進攻や北朝鮮のミサイル発射などを契機に、防衛を巡る議論が盛んである。もっとも、世界の様々な紛争も昨今急に始まったわけではなく、国内においても、普天間飛行場の移設、自衛隊の海外派遣、安保法制の議論といった、記憶に残る防衛案件は数多い。しかし、こうした事案の真相はいまさら改めて聞きづらい、あるいは本当のところが分からないという思いもある。
本書は、今も官邸の有識者会議メンバーなど第一線で活躍される元防衛事務次官が、こうした様々な案件について、自身が体験したことを元に丁寧に描いている。話題の現場に遭遇した人の体験談は、とかく自分が活躍する武勇伝的な描写になることもあるが、本書は題名からも推察されるとおり、エピソードには失敗談がふんだんに盛り込まれている。公務員のみならずビジネスマンとしても、自分の立場を重ね合わせて勇気づけられることも多いのではないか。
元々は、役所の後輩に向けた研修から始まった連載が発刊のきっかけでもあるが、近年の防衛政策をふり返りつつ、お詫びしすぎてギックリ腰になったというような話とともに、厳しい立場に置かれる社会人各位がほっこりしたいような時にお薦めである。
(朝日新書、税込み935円)