BaaSとは?わかりやすく具体例を踏まえて徹底解説。

2023.05.30 14:35
BaaS
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近年、銀行は新しいビジネスモデルとしてBaaSを利用したサービスを提供してきています。本記事では、BaaSとは何なのか、私たちの身近な事例を踏まえながら解説していきます。


目次


 


BaaSとは

BaaSは、「Banking as a Service」と「Blockchain as a Service」の両方の意味を持つ略称です。


Banking as a Serviceとは、もともと金融機関が提供してきた銀行機能やサービスを、APIを利用してさまざまな企業が自社のサービスに組み込める仕組みのことを指します。本来、ライセンスや仕組みを持つ銀行でしか行えなかった「為替」や「融資」「預金」といったサービスを、BaaSによってオープンに活用できるようになり、銀行以外のライセンスを持たない事業者でも自社サービスに組み込めるようになった点が大きなポイントです。


あまり意識したことがないかもしれませんが、私たちは普段から生活の中で自然にBaaSが活用された金融サービスを使っています。例えば、Uber Eatsでのクレジットカード払いや、タクシーアプリGOの利用、ZOZOTOWNのツケ払いなど、ごく身近に存在します。


そして、もう1つの意味であるBlockchain as a Serviceとは、正確な取引を可能とする仕組みのことを指します。ブロックチェーンという名前の通り、利用者のデータはブロックに保管してまとめ、コンピュータ同士が正しい記録をチェーンのようにつないで蓄積する、というイメージです。


この仕組みにより、一部のコンピュータで取引データが改ざんされたとしても他のコンピュータが正しいデータを持っていることから、多数決された正しいデータの方を採用されるため不正な取引が防げます。


金融に関わる業務のデジタル化は進んでおり、BaaSの市場規模は今後ますます拡大することが予想されています。


・BaaSが注目されている理由

BaaSが注目されている背景には、ITの急速な発展に伴うニーズの変化が挙げられます。ITの発展は、金融業界に限らずあらゆる業界でデジタルニーズを高めていますが、金融業界においてはオープンバンキングの推進が求められています。


オープンバンキングとは、銀行で取り扱ってきた機能やデータをAPIで公開することを指します。これにより、銀行機能の一部を搭載したアプリが普及するようになり、私たちは時間や曜日を気にせず銀行で行ってきた手続きの一部を気軽に行えるようになりました。


また、金融以外のサービスを提供している事業者が、既存のサービスに金融サービスを組み込むことをEmbedded Financeと言いますが、こうしたサービスへのニーズの高まりも、BaaSが注目される1つの要因となっています。


・BaaSの3つのメリット


BaaSが活用されることで、私たちにどのようなメリットがあるのか、利用者、金融機関、事業会社の3つの立場から見てみましょう。


  利用者のメリット

利用者にとっての大きなメリットは、ECサイトの買い物がストレスなく行えたり、スマホからいつでも入出金や振込等の手続きが行える点ではないでしょうか。BaaSが活用されていなかった時は、ECサイトで買い物を行っても決済のために外部サイトに飛ばなければならなかったり、後にコンビニで振り込む必要があったりと、なにかと手間も発生していました。


また、銀行口座から振込をする時は銀行やATMが使える時間に出向く必要がありました。BaaSによって、これらの手間がなくなり、短時間でストレスなく買い物や銀行での手続きの一部を済ませられることは、生活の利便性にもつながっているでしょう。


  金融機関のメリット

金融機関にとっても、BaaSを活用するメリットはあります。以下のメリットによって、売上や顧客満足度の向上、新規顧客の獲得などの効果が生まれる可能性もあると考えられます。


   差別化につながる

BaaSで自社のサービスを他社に公開すると、新しいビジネスモデルにつながるチャンスが得られるでしょう。一般的な銀行の業務以外のサービスをより広く知ってもらえる機会になり、それが差別化にもつながります。


   新規顧客獲得の場が広がる

銀行が新規顧客を獲得しようとした場合、従来の方法ではコマーシャルやキャンペーン等が主流で、顧客との接点も限られていました。しかし、BaaSの提供により、他社のサービスに自社のサービスが組み込まれる形となり、新しい顧客との接点が増えます。本来ならば接点を持ちにくい顧客とも、つながりが生まれる場面が広がります。


  事業会社のメリット

事業会社のメリットは、銀行のライセンスを取得することなく金融機能を組み込める点にあるでしょう。そのことで、以下のようなメリットも生まれます。


   安全性が高い

金融事業者でない会社にとって、金融サービスを取り扱うリスクは大きいです。しかし、BaaSを活用すると、金融事業者がサービスを行っているため安全性が高く、事業会社が携わる範囲を最小限に抑えながら金融サービスを取り扱うことができます。


   どのような事業者にとっても利便性が高い

BaaSは、さまざまな事業者に合わせてある程度自由に利用できるようになっており、事業会社のサービスや運用の都合を考えながら使うことが可能です。


   コストが削減できる

一般的に、他社サービスとの連携はプログラムの開発等に人件費などのコストがかかります。しかし、BaaSの場合は既に提供されているAPIを活用するため開発にかかるコストを大幅に削減できます。


・BaaSのビジネスモデル


BaaSによって既存のサービスの中に金融サービスが組み込まれているケースは少なくありません。ここでは、4つのビジネスモデルについてご紹介します。


  小売業×金融

サービスに決済機能を埋め込むモデルは、とても多く見られるビジネスモデルと言えるでしょう。


例えば、ユニクロが行っている「UNIQLO Pay」では、会員証アプリに銀行口座やクレジットカードを登録しておくと、店舗やオンラインストアでの会計時にQRコードを読み込むだけで支払いができます。もともと、ユニクロでは会員証の提示と会計を別に行っていましたが、このUNIQLO Payの導入によって会計がスムーズになり、レジの待機時間の減少につながっています。


参照:ユニクロ|UNIQLO Pay|公式オンラインストア(通販サイト)


  配車アプリ×個人事業主×金融

配車アプリの「Grab」では、ドライバーと乗客の両方に対してメリットの大きい金融サービスを組み込んでいます。乗客は、Grab Payを活用して事前決済や後払い決済を行うことが可能です。


さらに、ドライバーにとってもメリットが大きいのは、運転実績を基に融資や保険のサービスが利用できる点にあります。Grabのドライバーの多くは個人事業主であり、一般的なローンや保険の審査が厳しくなるところを、保有するデータを基にして金融サービスが利用しやすくなる仕組みが整っていることから、ドライバーにとっても利便性が高いものとなっています。


参照:GrabPay - Mobile Wallet Payment Solution | Grab MY


  家電販売×金融

家電量販店のヤマダデンキは、2021年より銀行代理業者として「ヤマダNEOBANK」を創設しました。実は、銀行の機能そのものは住信SBIネット銀行が提供しており、ヤマダNEOBANKは1つの支店としての位置付けです。ヤマダデジタル会員は、口座開設や預金・振込・振替・ローンなど銀行と同様の金融サービスを利用することができ、さらにヤマダデンキの商品の購入等で得たポイントプログラムと連携をしながらさまざまな金融サービスも提供されています。


参照:ヤマダNEOBANKについて(ヤマダネオバンクについて)


  通信キャリア×金融

NTTドコモは、「dスマートバンク」というバンキングサービスによって既存のユーザーに新しい金融サービスを提供しています。dスマートバンクは三菱UFJ銀行の金融機能を組み込み、簡単に言えば「dポイントが貯まりやすい銀行」となっています。例えば、dカード払いの口座に切り替えたり、ドコモの料金の支払い口座にすると、dポイントが効率的に貯まる仕組みです。


このdスマートバンクでは、ドコモが提供しているサービスと連携しており、若い世代のユーザーにも届きやすい新しい価値をもたらす銀行として新規顧客の獲得を狙っています。


参照:dスマートバンク – dポイントがどんどんたまるデジタル口座サービス です。


・国内のBaaSの事例


国内でのBaaSの事例について、もう少し見ていきましょう。


  住信SBIネット銀行「NEOBANK」

NEOBANKが提携しているのは日本航空やヤマダデンキ、高島屋などで、APIを公開したのは2016年のことでした。邦銀では初めてのことでもあり、QR決済や積立、送金などを中心に提携企業のサービスを充実させています。例えば、日本航空との提携では、「JAL Global WALLET」を開発。海外で安心してお買い物ができるように多通貨のプリペイドカードとして活用されています。


参照:NEOBANK 住信SBIネット銀行


  SBI新生銀行グループ「BANKIT」

BANKITはSBI新生銀行グループのWalletサービスで、チャージやコード決済、ATM出入金、分割後払いなどのサービスが利用できます。今後は資産運用や保険なども提供予定となっており、その機能の充実化が期待されています。提携している企業は、自社に必要な機能だけ選ぶことが可能で、自社のアプリがなくても利用できる仕組みがとられていることから、多くの企業が活用しやすくなっています。


参照:BANKIT(バンキット)アプリ型プリペイドカード ~お金のこと もっともっとカンタンに~ | アプラス SBI新生銀行グループ


  みんなの銀行「Minna no BaaS」

Minna no BaaSはふくおかフィナンシャルグループが提供しているサービスです。預金や与信、決済などの金融サービスが中心で、画像共有サイトである「pixiv」と提携し設けられたピクシブ支店があることでも知られています。また、パーソナルテンプスタッフ株式会社とではテンプスタッフ支店も開設。2021年5月にBaaSサービスを開始したにも関わらず、既に多くのユーザーが口座開設をしているという実績があります。


参照:BaaS|みんなの銀行|デジタル銀行で価値あるつながりを


・BaaSを活用したサービスの事例

ここからは、BaaSを活用してどのような便利なサービスが提供されているのか、事例をご紹介します。


  Uber

従来、Uberのドライバーは報酬の受け取りまでに1週間待つ必要がありました。しかし、BaaSの活用により、Uber Debit Cardを開発。このカードを使うと、報酬を即日で受け取れるサービスが利用できるようになり、よりドライバーにとっての働きやすさや利便性を高めることに成功しています。このおかげで、ドライバーの登録者数が増加し、Uberをより多くの人に利用してもらえる環境づくりにつながっています。


参照:The Uber Debit Card


  Apple

Appleは、クレジットカードの「Apple Card」や「Apple Pay Cash」でBaaSを利用しています。Appleが利用しているBaaSはカリフォルニア州にある「Green Dot Bank」のもので、この銀行の金融機能がApple Pay Cashに組み込まれています。ユーザーは、メッセージ機能を利用して送金や請求、ウォレット機能による管理などを行うことが可能です。


参照:


Apple Card - Apple


iPhoneでApple Cashを設定する/使用する(米国のみ)


Mobile Bank Accounts & Debit Cards | Green Dot


  Walmart

Walmartもまた、Green Dot BankのBaaSを利用しています。「Walmart Money Card」はVisaのプリペイドカードですが、カードの発行やキャッシュバックサービス、家計簿サービスの利用などを行うことが可能。決済手段をGreen Dot Bankのインフラを利用することでコストの削減を実現しています。


参照:​Walmart.com | Save Money. Live Better


・BaaSから生まれる金融の未来像

BaaSの活用は、これからますます拡大し一般化していくと予想されています。そのことで、事業会社はより新しいサービスの提供が促され、利便性も増すことでしょう。


利用者は、ストレスなくサービスを利用できる環境によって満足度も高まり、買い物や銀行での手続きに不便さを感じることは少なくなっていくと予想できます。


・BaaSの課題

銀行のライセンスがなくても金融機能が組み込めるBaaSですが、お金を扱うという特性上、高度なセキュリティシステムが不可欠となります。そのため、導入コストだけでなく運用コストも十分に用意する必要があるでしょう。


また、事業会社がBaaSで金融機関と提携するには、銀行の求める金融に関する専門性や信用力も必要となります。社内教育だけでなく、場合によっては金融の知識が豊富な専門家のサポートを得るなど、円滑に相互運用が進む体制を整えることも求められます。


 


まとめ

BaaSは、私たちの生活で意外と多くの場面で活用されているもので、既にその利便性を感じている方も多いでしょう。利用者、金融機関、事業会社がそれぞれメリットを得られることから、今後ますます活用の場は広がっていくと予想されます。事業会社が導入を検討する際には課題もあるかもしれませんが、費用対効果を見極めながら導入時期を検討してみてはいかがでしょうか。


 


【執筆者】ニッキンONLINE編集部


 

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