アフターコロナへの展望⑧~数だけではない従業員資産
2023.06.11 04:50
前回は顧客資産についてお話しいたしました。今回は、更に重要な人的資産である従業員資産についてお話しいたします。
私たちが融資先の事業性評価をするにあたり、必ず把握しなければならないのは、融資先の従業員の状況です。採用は出来ているのか? 退職動向はどうか? 従業員の年齢構成は?…。
当たり前のことですが、従業員が高齢化していて、新規の採用もできない会社は存続が危ぶまれます。人は5年たてば必ず5年歳をとります。5年後の融資先の人員構成をイメージして、社長とお話ししてみてください。社長の悩みをお聞きできるかもしれません。
また、人の問題は単に頭数ではなく、その質も問われます。人は年と共に老います。技能の伝承は出来ているのか? 従業員には、どのようなスキルや経験が求められるのか? 工場長や支店長などのリーダーの育成は出来ているのか? 従業員の教育や研修の状況も気になるところです。中核人材の退職が続くようでは大変ですね。
従業員資産の問題は、人の数と質だけにとどまりません。従業員同士のチームワークや会社との絆も重要なポイントです。「従業員資産=従業員の量と質×チームワークと絆」だと私は考えています。従業員同士のチームワークが良くなれば、会社の業績も上がります。従業員が自分の仕事に誇りを持ち、会社に愛着を持てば、生産性も上がるでしょう。
従業員と会社がお互いに影響し合い、共に必要な存在として絆を深めながら成長していく関係を「従業員エンゲージメント」といいます。大切なのは、従業員と会社の双方向性です。従業員にとって、この会社で働くことに誇りを持ち、仕事を通じて自分の成長が実感できること。会社にとっても、この従業員が会社になくてはならない存在で、会社の成長を支えてくれていること。従業員エンゲージメントは、従業員幸福度ともいわれます。幸せな社員は、生産性が1.3倍、創造性が3倍になるといいます。日本の企業の生産性の向上が求められているなか、人の生産性については、これから最も重要なポイントになってくると思います。
従業員エンゲージメントを測る簡単なモノサシとして、ギャラップQ12(下記の表)をご紹介します。問いの内容は具体的です。自分は? 自分の部下は? と問いかけてみてください。従業員資産は、お取引先の事業性評価だけではなく、私達金融機関自身にも問われている大きな課題だと思います。
次回(7月9日)も引き続き、事業性評価の人に関わるテーマとして経営者の資質についてお話ししたいと思います。
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