いまさら聞けない時事用語 イールドカーブ・コントロール(YCC)
2023.05.21 04:30
日本銀行は2016年9月、新たな金融政策として「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の導入を決定した。その柱の一つが、イールドカーブ・コントロール(YCC=長短金利操作)だ。この年の1月、日銀は短期金利をマイナス0.1%に誘導するマイナス金利政策を開始しており、それに加えて長期金利(10年物国債の金利)の誘導目標を0%程度に定めた。それよりも高い金利で売りたいという金融機関から、日銀が長期国債を無制限に買い取ることで金利上昇を抑え込んでいる。
その後、長期金利の誘導目標は据え置いたままで、許容変動幅を徐々に拡大。現在は「プラスマイナス(±)0.5%程度」に設定しており、これにより長期金利はほぼ0.5%を上限に推移している。市場の事前予想に反して、日銀が許容変動幅を±0.25%から±0.5%に変更した22年12月20日は、サプライズ効果で債券・株式・為替の各市場が大きく動いた。日銀が6月15、16日に開く次回の金融政策決定会合でYCCを再修正するとの観測が市場でくすぶっており、再び関心が高まっている。
イールドカーブ(利回り曲線)とは、債券市場の長短金利差を示したグラフで、短期金利よりも長期金利の方が高いことを示す右肩上がりが正常な姿だ。マイナス金利政策の導入後は長短金利差が少ない「フラット化」が進み、銀行が収益を上げにくい環境が続いている。そのため、YCCの修正や撤廃によってグラフの傾きが大きくなる「スティープ化」が進めば、銀行の収益環境は改善することになる。
日銀が市場を経由せずに、国から国債を直接引き受けることは、財政ファイナンス(政府の財政赤字を中央銀行が補てんすること)を防ぐ目的で禁じられている。だが、市場経由の買い取りとはいえ、国債市場では日銀による新発10年物国債の保有割合が100%近くに達することもあり、市場をゆがめる一因となっている。
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