全銀協会長、出口戦略へ「適切な判断を」 日銀新総裁に期待
2023.02.16 19:26
全国銀行協会の半沢淳一会長(三菱UFJ銀行頭取)は2月16日の定例会見で、4月に日本銀行総裁に就任予定の植田和男氏に対し、大規模金融緩和の出口戦略を進めることや金融市場が健全に機能するための適切な判断に期待を示した。また銀行界の賃上げの動きに関連して、人的資本への投資を強化していく重要性を強調した。
植田氏は戦後初の学者出身の総裁となる。半沢会長は「過去に日銀の審議委員も務められるなど実務経験も豊富で、日本を代表する経済金融政策の専門家の一人」と述べた。副総裁には前金融庁長官の氷見野良三氏と日銀理事の内田真一氏が就任予定で、「非常にバランスの取れた人事」と評価した。
黒田総裁は2013年3月の就任以来、量的・質的金融緩和やマイナス金利政策、イールドカーブコントロールなど多くの政策を導入してきた。「デフレ的な状況から抜け出したという意味で一定の効果があった」とする一方で、「異次元緩和が継続される中でイールドカーブが歪むなど市場で一部機能の低下が見られる」と指摘。金融機関にとって預貸金利ざやの縮小、運用環境の悪化など収益にマイナス影響があったことに触れた。
政策効果と副作用のバランスの取れた政策が実行されることが重要とした上で、今後賃金上昇を伴う形で持続的・安定的な物価上昇を展望できる局面が訪れれば、「日銀はいずれかの段階で大規模金融緩和の出口戦略を進めることになる」。金融緩和政策を見直す際には、金融市場のボラティリティ(変動率)が高まることも予想され、「そうしたリスクをできる限り軽減させるためにも、政策の予見性を高めるフォワードガイダンスをはじめ市場との十分な対話を行いながら、金融市場が健全に機能するよう日銀が適切に決定・判断することを期待する」と語った。
賃上げについては「経済の持続的成長の観点はもとより、企業にとっても重要なステークホルダーである従業員に還元することによって自社の持続的成長につなげていく上で重要」とし、「足元の物価動向も十分に踏まえつつ、構造的な賃上げや継続的な処遇改善を実現していくため、各銀行が中長期的な目線で人的資本への投資を強化していくことが肝心」と話した。一部銀行で初任給引き上げの動きがあることも受け、「他社・他業界と比較して魅力ある処遇を提供することは、人材確保の観点からも重要」と述べた。
関連キーワード
おすすめ
アクセスランキング(過去1週間)
- MUFG、大谷翔平選手との契約が終了 ブランドパートナーとして6年間
- 自民党、郵政民営化法など改正案 上乗せ規制の文言修正 「速やか」から「3年ごと検証」へ
- 地域金融機関、福利厚生支援に熱視線 職域基盤の構築見据え
- NTTドコモ、銀行業参入に結論出ず 前田社長「なんとか進めたい」
- 信金、保証システム刷新へ 審査申し込みに紙不要
- やさしいニュース解説 証券口座の乗っ取り、隙を突く新たな不正手口
- 大手行、中途採用で営業力補強 地銀・信金から流出も
- MUFG、マイボトルの利用促進 ペットボトル1万4500本削減
- 常陽銀、手形帳などを等価買い戻し 法人決済デジタル化促進
- 高知銀、シニアへ業務委託拡大 人手不足解消に一手