【Discovery 専門家に聞く】経営人材紹介し企業を元気に 国と金融機関がタッグ

2023.02.17 04:45
インタビュー Discovery
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地域経済活性化支援機構 就業推進部長・中島 隆行氏

地域経済活性化支援機構 就業推進部長・中島 隆行氏


大企業から地域企業に転職する人を、国が応援する取り組みが軌道に乗り始めてきた。金融機関とのつながりが強い地域経済活性化支援機構(REVIC)が実務を手がけている。同機構の中島隆行就業推進部長に、これまでの進捗状況や推進上のポイントを聞いた。「レビキャリ」の推移


◆メガバンクからの転職など9件成約
 「地域企業経営人材マッチング促進事業」は、金融庁の補助事業だ。都市圏の大企業から地域の中堅・中小企業に転職する流れを創出し、地域企業の経営革新や生産性向上を図る狙いがある。人材データベースの「REVICareer(レビキャリ)」には大企業の人材情報と地域企業の求人情報が登録されており、地域金融機関が人材マッチングの仲介役を担っている。参加金融機関の数は2023年1月18日時点で105先(うち地方銀行58、第二地銀28、信用金庫18、信用組合1)に増えた。
 21年10月から事業が本格的にスタートし、23年1月までのマッチング件数は9件。中部地方の60代のメガバンク出身者が中部地方のサービス業に移って財務責任者になった事例や、50代の商社出身者が同じ近畿地区でリサイクル業の営業事務管理職に転職した事例などがある。求人は、総務、財務、経理など管理部門の部長職や販路拡大に強い人材のニーズが多い。
 地域金融機関は、レビキャリを無料で使用できる。大企業所属の人材だけが登録されたデータベースなので、取引先の地域企業が後継者不足に悩んでいる場合にも経営人材の採用を支援しやすい。地域企業には、一定の要件を満たせば、採用した人材の最大2年間分の給与の3割が、給付金として支給される。そのため、地域金融機関は取引先に対し、人材採用コストの低減を提案できる利点がある。大企業と地域企業の年収ギャップは大きいので、その差額を埋めるための給付金制度を、地域金融機関から取引先に周知してほしい。


◆人材データベースの登録者数が倍増、中島氏
 大企業人材は、退職後のセカンドキャリアを考えている人や、家庭の事情で帰郷を望む人などを、人事部から登録してもらっている。当初は地域企業に転籍する場合だけ給付金を支給していたが、22年1月からは兼業・副業や在籍出向の場合も対象に加えた。兼業・副業を解禁する大企業が増えたことや、若手社員の武者修行の機会として地域企業に出向させたいという要望があったことから、給付金制度を見直した。
 22年8月以降は、大企業の人事部が関与しない個人登録もウェブで受け付けており、個人登録者数は1月18日時点で195人。人事部経由も含めた全体では、大企業人材の登録者数が22年3月末の604人から1388人(1月18日現在)に倍増した。そのうち73%を、金融・証券・保険業界の大企業人材が占めている
 登録者向けに24種類の研修・ワークショップを無料で用意しており、地域企業で活躍するためのスキルを学ぶ講義や転職後のカウンセリングなど多様なプログラムを提供している。22年12月には特設サイトを開設し、大企業人材、地域企業、地域金融機関のそれぞれに向けた情報を掲載している。地域金融機関では事業者支援の一環として人材紹介事業の位置づけが高まっていると感じており、今後さらに連携を強化していきたい。

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