識者に聞く2023年の銀行界①  “金利復活”への対応がカギ

2023.02.03 04:41
インタビュー
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SBI証券 鮫島氏_page-0001

        鮫島・SBI証券シニアアナリスト


有価証券運用の含み損拡大や実質無利子・無担保(ゼロゼロ)融資の返済本格化への対応など、課題が山積する銀行界。2023年の見通しを識者に聞く。初回は、SBI証券の鮫島豊喜シニアアナリスト(62)。


――今年の銀行界の展望を。


「国内は久々に金利が復活する。これをハンドルしていくのは簡単ではない。プラスの面は利ざやが拡大することだが、円債の含み損が膨らむというマイナス面もある。また、海外はリセッション(景気後退)入りとの指摘もあるなか、海外エクスポージャーが大きい大手行は、直近の米銀大手決算のように引当金が増加する可能性もある」


――国内ではゼロゼロ融資の返済が本格化する。


「(23年3月期)中間決算が終わった時点で各銀行に取材した限り、資産の劣化はあまりない。基本的には、ゼロゼロ融資で銀行の財務的な負担はないだろう。ただ、融資先が倒産・破たんすると銀行の手間にはなるため、そういった面のコストは多少かかるかもしれない。当然、プロパーで融資をしていれば、その部分は影響を受けることになる」


「気になるのは、長期的に見ると貸出金利と倒産件数が驚くほど一致して動いている点だ。因果関係があるのだとすれば、これから金利が上がれば倒産件数も増えてくる。当然、大手行より地銀の方が影響を強く受けるだろう。この点は懸念材料だ」


――銀行株の見通しについて。


「日本銀行による金融政策変更の期待から、少なくとも年前半は好調だろう。YCC(イールドカーブコントロール)の上限は撤廃され、マイナス金利政策もいずれ解除されると見ているが、株価は実際の政策変更前にピークを打つはずだ。年後半は要注意になる。ただ、銀行の業績はそれほど悪くはならないだろう」


――金融庁は仕組み債販売を問題視している。地銀の収益への影響はどうか。


「仕組債はほぼゼロになると見た方が良い。その部分は、伸ばす余地がある法人関連で埋めていくしかないだろう。特に、事業承継関連のM&A(合併・買収)やLBO(借り入れを活用した買収)ファイナンスだ。マーケットは大きく、リソースや資本をもっと投入することでリターンが得られるだろう」


――注目している個別行はあるか。


「大手行では、みずほフィナンシャルグループだ。大きな課題はシステムの安定稼働とコーポレートカルチャーの変革だが、前者については今のところできているように見える。企業風土の改革は、(23年3月期)中間決算の説明資料からまとまった分量が割かれて開示されるようになった。また、(前アドビ副社長で22年5月に入社した)秋田夏実氏(グループ執行役員・コーポレートカルチャー担当兼人事グループ副グループ長)の採用もあり、前向きな姿勢が出てきているように感じる。木原正裕社長も就任2年目に入る。ポジティブな変化に期待したい」


「地銀では、横浜銀行と東日本銀行がぶら下がるコンコルディア・フィナンシャルグループだ。横浜銀は統合前、ROE(自己資本利益率)も純利益の金額もOHR(経費率)も地銀でナンバーワンだった。今はそうではないが、(東日本銀の経営再建の進捗により)今年度を含む過去2年でようやく回復してきている。まだまだ伸びしろもある」


――横浜銀は神奈川銀行の買収を検討している。


「横浜銀にとっては、東日本銀を建て直した経験を活かすことができる。横浜銀の統合メリットは顧客層の拡大、神奈川銀にとっては顧客に提供できるサービスの質と量の向上だ。両行のステークホルダーと考えらえる神奈川県内の顧客にとってもプラスだろう」

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