九州・沖縄の政府機関 脱炭素へ横断支援 政策組み合わせ

2023.01.19 04:50
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局長級会合で横断的な支援を強化する方針を固めた(1月18日、福岡市)
局長級会合で横断的な支援を強化する方針を固めた(1月18日、福岡市)

九州・沖縄地区の政府機関は地域の脱炭素へ、府省庁をまたいだ支援を強化する。二酸化炭素の排出量実質ゼロへ国が集中的に支援する「脱炭素先行地域」などを目指す地方自治体を後押しする狙い。各府省庁が持つ知見や支援メニューを組み合わせ、案件形成につなげる。


1月18日、福岡市で開いた局長級会合「九州・沖縄地域脱炭素推進会議」で方針を固めた。具体的な強化策は傘下の課長級会合で詰める。横断的に支援するうえで生じた課題も把握し、必要に応じて本省に制度の改善策を提案したい考え。九州地方環境事務所の築島明所長は「(各機関が)連携しながら地域の課題解決や地方創生につながる脱炭素を積極的に推進したい」と強調した。


脱炭素化は幅広い分野が関係する場合が多く、様々な支援策を組み合わせられる可能性がある。国の補助金は所管省庁が異なっても同一の取り組みに対して重複適用は認められないが、分野が違えば適用できる場合もある。


例えば、1次エネルギー消費量を実質ゼロにするZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化と建物・外壁などに木材を使う木造化・木質化を進めれば適用できる補助金が広がる可能性がある。太陽光で発電した電力を農業に生かしたり、電気自動車の普及と再生可能エネルギーの活用を一体的に行ったりする場合も想定する。


既に自治体向けのワンストップ相談窓口を設けた。九州地方環境事務所が受け付け、脱炭素推進会議のメンバーに照会して一括回答する。金融機関や事業者の問い合わせにも対応する。


2022年6月から半年間の照会件数は73件。「ZEBに活用できる支援策」を求めた自治体には環境省の事業を紹介し、経済産業局や地方整備局にも支援策を確認して情報提供した。バイオマス発電関連の照会には環境省や農林水産省の事業を回答した。


各政府機関による個別の連携は引き続き深める。今後は必要に応じて自治体や金融機関向けに横断的な出前講座などを検討したい考え。それぞれの支援策の理解を深める勉強会も視野に入れる。


22年度は所管業界向けセミナーの共同開催が相次いだ。22年10月には財務局や経済産業局、環境事務所が共同で脱炭素の基礎知識を学べるセミナーを開き、管内の地域銀などから34人が集まった。財務局と環境事務所は再エネ基礎セミナーも企画した。



22年度内に支援策集改定へ


地域の脱炭素化は官民による連携がカギを握る。政府は自治体と並び、地域金融機関を「(地域脱炭素に向けた)連携の中核」と位置づける。地域銀などは幅広い事業者と取引しており、地元関係者への後押しを期待する。


局長級会合は21年12月、地域の脱炭素化に向け縦割りを打破するために立ち上げた。財務、経済産業、国土交通、農林水産、総務、環境など各府省庁の地方機関トップがメンバーで、傘下には課長級会合がある。これまで予算事業の合同説明会なども開いた。会合創設後に作成した支援策集(サポートブック)は22年度中にも改定し、使いやすくする。メーリングリストを通じて脱炭素関連の支援策を共有する情報発信も検討する。


政府は50年までに温暖化ガス排出量を実質ゼロにする目標を掲げている。30年度までにモデルとなる先行地域を100カ所以上創り出したい考え。


国が集中支援する先行地域は環境省が有識者の意見を踏まえて選ぶ。九州・沖縄地区では福岡県北九州市と周辺17市町、熊本県球磨村、鹿児島県知名町・和泊町、宮崎県延岡市、沖縄県与那原町の5エリアが認められた。23年2月に3回目の公募が始まる。

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