識者インタビュー④ 松本・元FVC社長「VCと同じ土俵で戦う必要ない」
2023.01.10 04:50
「ベンチャー投資の出口はIPO(新規公開株式)に限定すべきではない」。地方創生ファンドの組成・運営を手掛けるフューチャーベンチャーキャピタル(FVC)の前社長で、ABAKAMの松本直人代表取締役は 地域金融機関に対してこう提言する。
ーー地域におけるエクイティファイナンスの担い手として、地域金融機関の可能性は。
「可能性は非常にある。だが、既存のベンチャーキャピタル(VC)と同じ土俵、同じルールで戦う必要は全くない。地域金融機関は、超ハイリスク・ハイリターンの東京マーケットを狙うのではなく、その地域のなかでエクイティファイナンスが必要な人たちにきちんと投資し、成長につなげる。そしてその対価を長期的に投資先の収益から回収できるモデルを作るべきだ」
「既存VCのルールは2つある。一つは、株式市場で投資回収すること(IPO)。もう一つは、回収の期限があることだ。一般的には10年の期限を設けているが、実質的には投資して3~5年で事業価値が10倍以上にならないといけない。上場できなかった会社の投資回収は、ほぼロスになる。だから、一社に対して超ハイリスク・ハイリターンを求めないといけない構造になっている。融資の超ローリスク・ローリターンと真逆だ。そこの中間地点には資金を必要としている人たちがたくさんいるものの、資金供給のあり方は非常に限定的になっている状態だ」
ーー地方では投資対象となるスタートアップ(SU)が少ないという声もある。
「SUの定義もバラバラだ。おそらくユニコーンを目指すスタートアップは少ないと思う。ユニコーンを目指してはいないが、新しい事業を立ち上げ、地域の社会課題解決に向けてチャレンジする人たちもSUだ。そこも含めると地方にSUが少ないことはない。既存VCのルールで投資できる未公開企業は国内に5000社ほどしかないかもしれないが、地域金融機関には成長を目指す何十万社というマーケットが存在する」
ーー具体的な手法・ノウハウは。
「投資回収をIPOに依存するのではなく、投資先の利益を源泉にすべきだ。手法はいくらでもあるが、ポイントとしては、議決権のある株式がいろいろな人に渡ると投資先は困るため、議決権がないことだ。長期的に優先配当が出る、または利益剰余金で自社株買いができる権利をつけた株式を発行させたうえで、企業価値が上がれば、株式自体の流動性が増す。そうすると、いろいろな人に持ってもらえるようになる。株主にはその会社の成長を支援するインセンティブが生まれる。エクイティファイナンスには、そういう結びつきみたいなものを生み出せるポテンシャルがある」(おわり)
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