旧銀行店舗が大変身 エイトブックス仙台(旧七十七銀行八本松支店)
2022.12.25 04:45
仙台市内にある旧七十七銀行八本松支店の建物を利用して2022年8月にオープンした会員制の図書施設「8BOOKs SENDAI」(エイトブックス仙台)。外観を見る限り銀行関係者なら、ここが銀行店舗であったことは想像がつくかも知れない。だが一歩、中に入ると、その見方は一掃される。高い天井に、間接照明を効果的に使った空間演出。壁際にはびっしりと本が並べられ、中央には落ち着いた色合いのテーブルやイスが配置されている。イメージはまるで洗練されたギャラリーだ。建物に足を踏み入れると笑顔の女性、春木友栄・ブランド・ビジョン・プロデューサーが迎えてくれる。
不動産事業を営む「アイ・クルール」(仙台市、石垣智浩代表取締役)が始めた、これまでにないスタイルの図書施設。有料で会員になると、ここの空間で本を読むことができる。蔵書数はおよそ1万6000冊。比較的新しい本が多いようだ。一見すると公の図書館のようでもあるが、ぶらり歩いてみると、本の収め方の面白さに気付く。1階と2階のフロアには、八つのコンセプトに基づき、本が並べられている。ただ、ビジネス、小説、漫画などのジャンルごとに分かれているわけではない。
「なりたい WANT TO BE」「触れる TOUCH ON」「気付く TO NOTICE」「表現する TO EXPRESS」「つながる CONNECT WITH」「参加する TO JOIN」「続く to be continued」「この先も仙台に BE SENDAI」。
これらのコンセプトに基づきつくられた八つのエリアには、ジャンルを超えてセレクトされた本が並ぶ。本が好きな人なら、「これが読みたい」といった明確な目的がなくても、「何か面白そうな本はないか」「新しい気づきを与えてくれる本はないか」「元気にしてくれそうな本はないか」と、漠然と本を探すことだってある。ここではさらに、スタッフが笑顔で会員を迎え、会話をしながら本探しを手伝ってくれる。
石垣社長は、動画をはじめ大量の情報があふれる現代において、本から学ぶことの大切さを伝えたいという思いを持って、この施設をつくったという。
「本でしか受け取れない体験があるし、読む側の思いで受け取れる情報の量が変わってくる。1冊読んで人生が変わるものではないが、100冊、1000冊と読んでいけば、ある瞬間に何かがつながるかもしれない。例えば、子供が自転車に乗ろうとしても最初は乗れないけど、いつの日か乗れるようになる。なぜ乗れたのかを説明しようとしてもできない。そんな感覚に近い」と話す。
「ここにイーロン・マスクの本がある。ここでは好きな時間に読めるが、この情報量を対談で得ようとすると巨額のお金がかかるはず。それが安い金額で得ることができる」とも。
料金は、小学生、中・高校生、大学生、大人で料金が異なり、日額なら500~1300円、月額では1000~3000円。本の選定は、出版取り次ぎの大手「日本出版販売」(ニッパン)の協力を得ながら行っている。
利用者は、1歳から80歳までと幅広い。1歳とは、お母さんに連れられて来た赤ちゃんだ。子供向けの絵本がそろえられているほか、授乳室もある。平日は勉強するための空間として利用する学生、休日にはサラリーマン層も訪れる。家族同士の待ち合わせ場所に使われるなどの光景も目にする。
本が読める空間でありながら、イベントを行っているのも、ここならではの特徴だ。例えば、コンセプトの一つに「この先も仙台に」がある。後世に仙台を伝える書籍、東日本大震災に関する書籍があり、震災の語り部が登場するイベントなども行っている。宮城県内のワイナリーから人を招き、ワインのイベントも開いた。
石垣社長は「やがては仙台の人や街や文化を伝えられるメディアを仙台につくりたいと思って立ち上げた。それにはまず箱が必要。そんなことを以前から考えていた。当社の本店が近くにあり、七十七銀行さんから買い取りの打診を受けたこともあって、思い切って始めた」と話す。七十七銀行八本松支店は、20年7月に長町支店の店舗内店舗となった。それから2年後に現在の施設ができた。
入り口から1階のもっとも奥まったところに金庫室がある。簡単には壊せないことから残ったというが、スタジオやプレゼンテーションのための部屋など、さまざまな使い方を模索していくらしい。
関連キーワード
おすすめ
アクセスランキング(過去1週間)
- 大手行、個人預金 獲得競争が激化 みずほ銀も金利戦線に
- 西武信金、役員OBが「幕賓役」で活躍 現役時の担当店サポート
- 金融庁、「強化プラン」策定へWG開く 地域金融の役割などを議論
- 商工中金と地域金融機関、中小発展へ協業模索 再生支援など連携拡大
- 金融庁、粉飾対策で「第2線」注視 営業現場と連携求める
- 西京銀、農業分野へ関与強める 出資や行員出向、専門部署も
- 銀行と生保、窓販フロー完全紙レス 池田泉州銀は年3900時間削減へ 契約前交付を電子に
- 三井住友FG、資産運用助言で新会社 選べる相談チャネル
- ブラックロック・ジャパン、国内初の外株アクティブETF上場 AI銘柄に投資、早期100億円へ
- auじぶん銀、1カ月定期の金利9%に 阪神リーグ優勝受け