安倍元首相、凶弾に倒れる 金融界にも衝撃
2022.07.08 19:15
7月8日、奈良県近鉄大和西大寺駅のバスロータリー周辺で参議院議員選挙の自民党候補者の応援に駆け付けていた安倍晋三元首相(67)が街頭演説中に銃撃されて死去し、金融界にも衝撃が広がった。
8日午前に200円超値上がりした日経平均株価は、11時半ごろに銃撃事件が起こり、その一報が伝わると投資家の間でリスク回避の動きが広がり、午後は反落。一時は午前終値より300円超値下がりした。
事件現場は、近鉄大和西大寺駅を降りてすぐの地元金融機関の営業店などが立ち並ぶエリア。安倍元首相は、演説の途中で背後から撃たれた。
現場で演説を聞いていた金融機関関係者は「(安倍氏が)話して、1~2分してからかな。後ろから近づいてきて、ドン、ドンという感じ。一瞬、イリュージョンかなと思った。まさかそんなのが銃撃だとは思わないし、花火が上がったのかと思った。そしたら、周りがキャーってなった。1発目の時はまだしゃべっていた。2発目の時に途中で声が聞こえなくなったから、これは大変なことが起きたと思った」と証言する。現場では、AED(自動体外式除細動器)による必死の救命活動が行われていたという。
.jpg)
鈴木俊一金融相は8日夕方の会見で「選挙は民主主義を確立するための極めて根幹的な行為。そういう時に暴力でもって言論に圧力を掛けるようなことは絶対にあってはならない。強く非難する。どうしてこういうことになったのか、事実関係、背景などもしっかり調べていただきたい」憤りを示した。また、「松野官房長官から電話があった。こうした暴力に屈することなく、安全かつ的確に選挙は執行されるべきであるということ、各省庁で行政を停滞させることなく、しっかりと職務をすることという2点について指示があった」とも述べた。

第一次安倍政権で金融担当相を務めた山本有二衆院議員は自民党本部で記者団の取材に応じ、「かけがえのない大事な人物であり、どうしても失いたくない」と述べた。
ある金融庁幹部は「銃で撃たれたなんて前代未聞。危機管理はどうだったのか。元総理だとSPは1人ではないか。防ぐのは難しいのだろう。(犯行現場は)奈良だが、警視庁が警備に行っていると思う。責任問題になるかもしれない」と語った。
安倍氏が首相在任中に推進した経済政策「アベノミクス」は、〝3本の矢〟(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略)の一体的な推進によって日本経済の再生を目指すものだった。日本銀行総裁に指名した黒田東彦総裁による異次元金融緩和は、株価上昇の起点となった。一貫して積極財政の姿勢を崩さなかった安倍氏は、財政健全化を旗印とする財務省とは距離を置き、産業界の成長戦略に熱心な経済産業省を重用する政権運営が目立った。
安倍政権下の金融庁は、金融緩和で貸出金利が低下しても企業が借り入れに慎重だった状況を打破するため、銀行などの預金取り扱い金融機関に対して新規融資を積極化するよう要請。それ以前は、バブル経済崩壊後に銀行界が大量の不良債権を抱え込んだ反省からリスク管理の徹底を求める姿勢が根強かったため、銀行界には急な政策転換に対する戸惑いが広がった。
黒田日銀総裁、半沢全銀協会長らが追悼
安倍晋三元首相が7月8日、街頭演説中に銃撃され死去したことを受け、日本銀行の黒田東彦総裁や全国銀行協会の半沢淳一会長らが追悼コメントを発表した。
黒田・日銀総裁は「誠に残念でならない。さまざまな分野で大変に大きな功績をあげられた。経済の分野では長期間続いたデフレからの脱却と持続的な経済成長の実現に向けて、多大な成果を残された。強力なリーダーシップにより、わが国経済の発展に尽くされたことに心より敬意を表す」と突然の死を悼んだ。
半沢・全銀協会長は「戦後最長の首相を務められ、長期にわたって外交、安全保障、経済の各分野で、わが国を牽引いただいた。近年においても、わが国の発展のため精力的に活動され、今後もご活躍されるものと期待していただけに、残念でならない」と故人をしのび、「いかなる理由であっても、暴力やテロ行為は断じて許されるものではなく、一日も早く平穏が取り戻されることを切に願っている」とつづった。
日本証券業協会の森田敏夫会長は「第2次安倍政権発足以降、約7年8カ月もの長期政権において、長引く円高・デフレ不況からの脱却、そして日本経済の再生を最大の目標に掲げ、大胆な金融緩和などを柱とした『アベノミクス』を推進し、わが国経済の安定的な成長に取り組まれ、大きな功績を残された」とコメントした。
関連キーワード
おすすめ
アクセスランキング(過去1週間)
- 地域銀7行が先行導入 マネロン機構のAIスコア
- 春の叙勲 金融界から24人
- 金融5団体と商工中金、適正な競争へ新枠組み 過去の民業圧迫踏まえ
- 地域銀・信金、取引先の経費削減支援 コンサル会社と連携拡大
- 京都信金、職員向け「京信大学」200回 講座受講者、延べ4000人超
- 十八親和銀、投信客への架電デスク新設 7万先にアプローチ
- Techで変える(2)宮崎銀、融資稟議書作成を自動化 業務時間は95%削減
- 日銀、政策金利を据え置き トランプ関税で海外経済減速見通し
- 大手損保、地銀の窓販デジタル化 火災保険、満期急増で
- SMBC日興証券、25年3月期純利益727億円 純営業収益はSMBC入り後過去最高