【推薦図書】「佐治敬三と開高健 最強のふたり」(北康利著)
2025.07.11 04:30
【推薦者】キャピタル・アセット・プランニング代表取締役 北山雅一氏
広告を超えた文化創造
本書を読むと、57年前開かれた大阪青年会議所家族大会での佐治敬三元理事長のスピーチを思い出す。この本は、サントリー2代目社長・佐治敬三と、作家であり広告マンでもあった開高健という異色のコンビが織りなした、戦後日本の企業文化と表現の融合を描いた評伝である。
経済成長の波に乗り、サントリーは赤玉ポートワインからウイスキー、さらにはビール製造に挑戦し、サントリー芸術財団を通じ芸術・文化にも貢献する。企業成長と所有とガバナンス、そして社会への貢献。その基礎を築いた佐治は、「やってみなはれ」の精神で新しい挑戦を次々に推進し続けた。
一方、開高は、サントリー宣伝部でコピーライターとして数々の名コピーを生み出し、芥川賞をも受賞する。サントリー提供のドラマ「ザ・ガードマン」のなかで流れる開高のコマーシャルコピーを思い出す。
本書は、2人の間に築かれた信頼と友情、そして互いの才能への尊重を軸に、企業と個人の理想的な関係を描く。佐治の起業家精神と開高の自由な精神が交差することで、単なる広告活動を超えた文化創造が可能になったことが示され、現在のスタートアップの経営にも参考となる。
(講談社、税込み1980円)