【展望2022 ➁】大槻・マネックス証券チーフ・アナリスト 膨らむ海外リスク
2022.01.28 04:45
世界的にインフレへの警戒感が強まっている。主要国の中央銀行は金融政策の軸足を引き締めに移した。国内市場にどう影響するのか。マネックス証券の大槻奈那チーフ・アナリストに、留意すべき海外リスクを聞いた。
――米国連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めの影響は。
「二つある。金利上昇期待の高まりと、資金運用の利回り拡大だ。国内金融機関にとっては苦しい運用環境が続いてきたが、少しは一息つけるだろう。海外向け融資では、大手行が組成するシンジケーションへの参加などを通じて、外貨での運用を増やしやすくなる」
――リスク要因は。
「不確実性が最も大きいのは、米国の中間選挙だ。フランス、韓国、フィリピンでも大統領選があり、市場の変動要因となりうる。米中関係は、2028年にもGDP(国内総生産)が逆転するとの試算があり、両国間の緊張は高まっていくだろう」
――注意すべきデフォルトリスクは。
「コアは新興国だ。新興国のクロスボーダー与信は60%以上が米ドル建てで、ドル高が進めば打撃となる。ただ、かつての70%超からは減った。その分、『その他通貨』が増えており、内訳は非開示だが、おそらく人民元だろう。新興国経済が危機に陥っても中国が資金支援をする可能性があり、短期的にはリスクの緩和材料だ。半面、中長期的には米ドルの信認低下や人民元のプレゼンス上昇につながりかねない」
――海外でバブルとの指摘がある。
「世界的な金融緩和でマネーがあふれ、どの資産も過去に比べ投機的になっている。10年以降、FRBの資産残高が米国金利に影響を与える相関が生まれた。22年後半にFRBはバランスシート縮小を開始する可能性があり、金利物には怖くて手を出しにくい。昔は債券への逃避でヘッジしたが、金利上昇局面で期間リスクを取りづらい。最近は暗号資産も株式と順相関となっており、資産と名の付くものはどれも価格下落のリスクがあるという特殊な年になる」
――貸出市場は。
「国内外とも、産業のソフト化に伴って巨額設備投資が減少しており、資金ニーズは伸びにくい。昨年は地域銀行の再編が進んだが、今後も(再編の選択肢を)考えざるを得ないだろう。コンサルティングなどの非金融業務では、隣の銀行と敵対するよりも手を組んで情報ネットワークを広げる方が、企業に対してよりよい提案ができる」
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