【推薦図書】「ジャータカ 仏陀の前世の物語」(松本照敬著)
2025.07.04 04:30
【推薦者】荘内銀行取締役常務執行役員・井上義紀氏
自己犠牲と利他の理想
本書の帯には、「ウサギは自ら死に、釈尊に転生した――。自己犠牲と利他を描く仏教説話集」とあります。何やら難しい気がしないでもありませんが、数ある仏教説話のなかで有名なものの一つがウサギとお月さまのお話です。
食べ物を何も持たないウサギは炎の中に飛び込み、自らの肉を布施(帝釈天<たいしゃくてん>)にささげた。帝釈天はウサギの善行が忘れられることがないように丸い月面にウサギの姿を描いた。このウサギこそ釈尊の前世の姿であった。さまざまな言い伝えや表現がありますが、簡記するとこのような話で知ってる方も多いと思います。
ジャータカの発祥はインドですが、日本語では「本生話」あるいは「前生物語」などと呼ばれています。内容は、仏教の開祖である釈尊(お釈迦<しゃか>様)の前世における物語を集めたものになります。輪廻転生思想のもと、国王、バラモン、商人、そして動物から神まで、さまざまな生を描く物語は「今昔物語集」などを通じて日本でも親しまれています。
本書は短編の物語集であり一貫しているのは、ウサギに代表されるような「自己犠牲と利他の理想」になります。どこから読んでもいいですし、今日の振り返りや明日のためという意味で大変味わい深い書籍です。
(角川ソフィア文庫、税込み1188円)
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