金融ホームドクター養成 金融法務(40)民法(1)
2022.01.28 04:05Q:土地の相隣関係について民法が改正されたそうですが、どのように改正されたのですか。
A:主に(1)隣地使用権に関する規律、(2)ライフラインの設備の設置権・使用権、(3)越境した枝の切取りに関する規律に関する改正が行われました。
【解説】所有者不明土地の増加に伴い、隣地所有者が所在不明の場合等に土地利用が阻害される事態が生じていました。こうした問題点等を背景として、土地利用等に関する規定を整備するため、2021年4月に民法の改正法(以下「改正法」)が成立し、2023年4月1日に施行される予定です。今回は改正内容のうち、相隣関係の規定についてご紹介します。
まず(1)隣地使用権に関する規律について、使用権の性質の明確化や隣地使用目的の拡充等の改正がされました。このうち、前者については、現行法は、土地所有者は、境界又はその付近において「障壁・建物の築造、修繕」のため必要な範囲で「隣地の使用を請求」できると定めていました。しかしながら、隣地の使用の「請求」の具体的な意味が判然としないとされていました。そこで、改正法は「隣地を使用することができる」と規定し、隣地使用につき隣地所有者からの承諾を必ずしも前提とせず、所定の場合には隣地を使用する権利がある旨を明示しています。
また、後者については、現行法で認められていた「障壁・建物の築造、修繕」に加え、境界標の調査、測量、越境した枝の切取り等のためにも、必要な範囲で隣地を使用できるものとされています。
次に(2)ライフライン設備の設置権等についてですが、現行法には、他人の土地を使用しなければ排水管等のライフライン設備を引き込むことができない場合に他人の土地に設備を設置することを認める明文の規定がなく規律が不明確でした。そこで改正法は、他人の土地へのライフラインの設備設置権や使用権を明記することとしました。また併せて、他人の土地を使用する者が設備設置の際に当該土地所有者等に事前に通知する義務、償金の支払義務や費用負担義務を負うこと等が定められています。
最後に、(3)越境した竹木の枝の切取りについてですが、従前は竹木の所有者に切除させる必要がありましたが、改正法では、竹木の所有者が所在不明の場合や催告しても相当期間内に切除しない場合等には越境された土地の所有者が自ら切取ることができる旨を定めています。
松尾綜合法律事務所 弁護士 神原あゆみ
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