【推薦図書】「FEAR 恐怖の男 トランプ政権の真実」(ボブ・ウッドワード著、伏見威蕃訳)

2025.06.06 04:30
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【推薦者】東短リサーチ社長・加藤 出 氏
刹那的な指導者

トランプ米大統領の関税策に世界が振り回されている。彼の振る舞いは深い洞察と計算に裏打ちされたものなのか? あるいはひどい思い込みと理解力の欠如によるものなのか? 第1次トランプ政権の内実を生々しく描いた本書を読むと、その答えは後者であることが見えてくる。


コーン国家経済会議委員長は客観的なデータや事実を提示して貿易のメリットを丁寧に説くが、大統領は「でたらめだ」「間違っている」と聞く耳を持たない。鉄鋼関税が「うまくいかなかったら撤廃すればいい」と軽く言うトランプに、コーンは「アメリカ経済をそんなふうにもてあそんではいけません」と諭すものの受け入れられない。マティス国防長官も、何度説明しても理解できないトランプは小学5、6年生のようだといら立った。


「解説」で一橋ビジネススクールの楠木建特任教授は読後の感想として、トランプは長期的な戦略思考が問われるビジネスにかかわったことがなく、それゆえ徹底的に刹那的であり、「不動産会社の大将ならそれでいいでしょうが、こういう人が大統領をやっているのは根本的な無理があります」と指摘している。トランプの任期は43カ月以上残っているだけに、楽観は禁物である。


(日本経済新聞出版、税込み2970円)

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