【眼光紙背】鳴り響く減税論を問う
2025.05.15 04:30
いわゆる「財務省解体デモ」が再燃している。大型連休中も街宣活動が相次ぎ、ネットなどの呼びかけに呼応した数千人の市民らが東京・霞が関に集結し気勢を上げた。
デモの新たな〝燃料〟となったのは、物価高対策としての消費税減税論だ。立憲民主党の野田佳彦代表が1年間に限り食料品の消費税率をゼロに引き下げるべく、参院選公約に盛り込む方針を表明。国民民主党も消費税の引き下げを公約に検討している。石破茂首相は否定的だが、公明党など与党にも導入論が出ていた。
消費税減税は食品など日々の購買に伴い世帯全般に広く効果が期待できるうえ、目に見えない側面でも物価高で国民が抱く「痛税感」を和らげる利点も大きいだろう。
ただ、課題もまた多い。政党側には迫る選挙に向け有権者受けを意識した狙いが透けて見える。社会保険料などの支払いが少ない高齢層に比べ、相対的に現役世代の負担が重くなるとの指摘もある。減税の確たる財源も不透明だ。
何より、消費税の基盤を揺るがしかねない。消費税は年々増大する社会保障を支える目的に立つ。日本の税制全般の硬直性は問題とはいえ、加速する高齢化のもと消費税を再三見直すなら、財政の柱で長期ビジョンが必要な社会保障の制度設計自体に踏み込まざるをえないのではないか。
そもそも野田氏自身が民主党政権で首相だった2012年、税と社会保障の一体改革での消費税率10%への引き上げで自民、公明両党と合意した。同氏は過去と「矛盾しない」とするが、参院選に向けた党内の圧力に抗しきれなかった形だ。
コロナ禍対策で効果が限定的だったとの批判はあるが、政策決定の迅速さや財源面なら給付金に利がある。他にも景気対策は検討できよう。税制は政治の良しあしを映す計器でもある。物価高対策は急務であっても、党利やポピュリズムに走らず熟慮を求めたい。
(編集委員 柿内公輔)
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