不祥事どう防ぐ 「不正起きない」の思い込みなくせ
2025.04.05 04:10
「信頼・信用」を礎とする金融界を大きく揺るがしている言葉がある。それは「不正」。
2024年は、監督官庁の担当者によるインサイダー取引、某メガバンク行員による情報漏えい、某証券会社社員による刑事事件、そして某メガバンク行員による貸金庫からの横領事件など、立て続けに大きな事件が発生した。
こうしたことから今、金融界の信頼・信用が大きく揺らぎ始めている。言わずもがなであるが、他人の金銭・財産などを取り扱うことをなりわいとしている金融界でこんなに大きな不祥事が連続して起こるとは誰一人思っていなかったであろう。
では、こうした不祥事をどのように防いだらいいか。この点について6回にわたり述べてみたい。
1回目は「思い込み」について取り上げる。
不祥事を防ぐという話になるとよく「不正のトライアングル」が取り上げられる。しかし、その「不正のトライアングル」を実践する際のポイントは何か。
まずは自分の職場で、あるいは自分の仲間は絶対に不祥事など起こさないという「思い込み」を持たないことである。
預金取扱金融機関では毎年30~40件の不祥事が発生している。
そう考えれば、自分の職場で不祥事が起こらないといった「思い込み」を持つべきでないことは明白であろう。
また、「思い込み」を持ったままだと、不祥事の前兆、例えば、身なりや化粧が派手になったといったことについて、つい見逃してしまうことがある(筆者の経験でもそうした例は多数あった)。
類似事例として、あの人は地元の名士の出身だからとか、実家が資産家だからといった話をうのみにして行動などが派手になっても納得してしまい、不祥事の前兆を見流したケースも過去には数多くある。
不祥事を起こすのは人間である。つまり、一人一人の行職員なのである。大事なことは、職場の仲間一人一人に関心を持つことである。
そうした関心を持つことで、日々の小さな変化に気づくことが可能となるが、「思い込み」はそうした、その変化に気づく目を曇らせてしまいがちである。
「思い込み」ではなく日々見えることの変化を客観的に捉えるようにすれば、不祥事の予兆、さらには未然防止につながる。
◆不正のトライアングル
「機会」「動機」「正当化」の3要素がそろった時に不正が発生するとされている。
金融監査コンプライアンス研究所代表取締役 宇佐美 豊