【推薦図書】『シン・日本の経営』(ウリケ・シェーデ著、渡部典子訳)
2025.03.21 04:30
【推薦者】東和銀行取締役常務執行役員・鈴木 信一郎氏
丁寧に変革・改善する
就職して数年でバブル生成とその崩壊期を体感し、その後、一時的な景気回復局面は何度かあったものの永きにわたるデフレ下で勤務を続けた私にとって、「失われた30年」との見方に違和感を持つことはさほどなかった。
本書はドイツ出身で、米カリフォルニア大でグローバル政策の教鞭(きょうべん)を執る著者によるわが国を対象とした経営論であるが、サブタイトル(悲観バイアスを排す)の通り、この「失われた30年」においても丁寧に企業カルチャーを変革し業績を改善させた日本企業の経営スタイルを独自の視点で整理している。
確かに米国ではGoogleやAppleなどシリコンバレー発のIT大手が今や私たちの日常生活に入り込むまでの成功に至った半面、その数十倍・数百倍のスタートアップが短期間に淘汰(とうた)されている。そうした現実からも日本の「タイトなカルチャー」(礼儀正しく適切にルールを守り他人に迷惑をかけない行動原則)は、変革・改善に時間がかかるという面はあるが十分に評価されるべきであろう。なお、本書で紹介される「7Pのチェックリスト」や「イノベーション・ストリーム・マトリックス」を用いた自社の定点観測は、「金利ある世界」に再び入った私たちにとっても有用と思われる。
(日本経済新聞出版、税込み1210円)
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