【推薦図書】『人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか』(中川毅著)
2025.01.17 04:30
【推薦者】野村アセットマネジメント取締役兼専務・本間 隆宏氏
終わらない気候変動
7万年の歴史を刻む奇跡の「年縞」が2006年に福井県の水月湖で掘削された。年縞とは湖沼などに層となって積もる堆積物で、そこに含まれる花粉やプランクトンを調べればはるか昔の気候を年単位で把握できるという。本書は年縞の緻密な分析に基づき、気候変動の壮大な歴史をエキサイティングに描き出す。
地球の気候は公転軌道、地軸の向きや傾きといった周期要素の影響で氷期と温暖期を繰り返している。氷期の間は気候が乱雑に変動する一方、現代のような温暖期は穏やかで安定した気候が続く。そして氷期と温暖期は予兆なく唐突に切り替わる。直近の氷期は1万1600年前に突然終わり、気温は3年で最大7度も上昇したらしい。産業革命以降100年にわたる緩やかな気温上昇は現代の深刻な課題の一つである。しかし自然には人間が引き起こすよりはるかに激しい気候変動を一瞬のうちに発生させる力が内在する。地球が公転する限りこの気候変動は永久に続く。過去の人類は農耕生活ではなく、植生の多様性に担保された狩猟採集生活をあえて選択することで厳しい氷期を生き延びた。著者はいずれ訪れる不測の気候変動を再び人類が生き抜く知恵も社会の多様性と包容力にあると説く。
(講談社、税込み1012円)
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