【推薦図書】『歴史の哲学 そこから未来を見る』(P.F.ドラッカー著・上田惇生編訳)
2025.01.10 04:30
【推薦者】信託協会専務理事・川嶋 真氏
ドラッカー思想のエッセンス
本書は、ドラッカーの著作から、社会観に関する名言を精選した書である。「ばらまき国家となった国家」「株主第一主義の誤り」「短期の資本利得は誤った目標」など、今日でも色あせないテーマが並ぶ。出典も示しており原典に当たって理解を深めることができる。
例えば、「最悪の事態として、国家はばらまき国家となった」「歳出は、政治家が票を買うための手段となる」「国民の金で票を買うことは、市民性の概念の否定である」とある。引用元の『ポスト資本主義社会』(1993年)では、予算編成は歳入見積もりから始まる、とのシュンペーターの考えを引用し、歳出は歳入に見合わなければならならず、無限の歳出ニーズにいかにノーと言えるかが予算編成だと主張する。他方、ばらまき国家は予算編成が歳出から始まる。従って、徴税や借り入れに節度が無くなり、政府の機能、政策課題等への国民の関心を低下させ、選挙民は「いずれが得かを基準に投票するにいたった」と指摘する。現在の日本の状況を予言していたかのような洞察である。
ドラッカーの思想を知りたいが、多忙で著作を通読する時間がない人にお勧めの好著である。
(ダイヤモンド社、税込み1540円)
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