【推薦図書】『山田方谷に学ぶ 改革成功の鍵』(野島透著)
2024.09.20 04:30
【推薦者】信託協会専務理事・川嶋 真 氏
真心と無私の改革者 山田方谷
山田方谷(ほうこく)は、備中松山藩の人で同藩の藩政改革を成功させた人物である。藩政改革では、調所広郷(ずしょひろさと)(薩摩藩)、村田清風(長州藩)らが有名だが、方谷の改革は決して彼らに引けを取らない。
19世紀半ば、危機的な藩財政の下で登用された方谷は、藩財政の実態把握を行ったうえで、大阪蔵屋敷を廃止して歳出削減を行い、債権者である大阪商人に債務返済の繰り延べ計画を認めさせた。また、蔵米を同藩で保管し有利な時期に販売したり、鉱山を直轄にして鉄器、農機具等の製造を振興し、杉、漆、たばこ等の特産品とともに、江戸で販売するなどして歳入を増加させた。
方谷の偉大さは、こういった歳出削減・歳入確保策で藩財政を立て直した改革手腕のみならず、いかに困難な局面でも「至誠惻怛(しせいそくだつ)」(真心と痛み悲しむ心)「義を明らかにして利を計らず」「事の外に立ちて事の内に屈せず」(大局観を持ち細事に関わらない)の精神を貫徹した生き方にある。それゆえ方谷を知る経営者等の評価は極めて高く、より多くの人に知っていただきたい人物である。
本書は、方谷の人物像を紹介した上で、その改革内容や成功理由を明快に分析し、改革の進め方や物事への対処に際しての心構えを実践的に教示してくれる好著である。
(明徳出版社、税込み1540円)
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