【推薦図書】『絶滅の人類史 なぜ「私たち」が生き延びたのか』(更科功著)
2024.06.21 04:30
【推薦者】野村アセットマネジメント取締役兼専務・本間 隆宏氏
今は亡き人類達の追想録
現生で人類といえば私たちホモ・サピエンスを指す。しかし過去には25種以上の人類が存在した。本書は、700万年にわたる人類の歴史のなかで、なぜホモ・サピエンスだけが生き延び、他の人類が絶滅してしまったのかを考察する。
絶滅した生物の行動を知ることは難しい。化石や間接的な情報を集め、多角的に検証し、読者を確度の高い仮説へ導く著者の語り口はミステリー小説のようにスリリングだ。私たちが生き残ったのは他の人類より頭が良かったからではないらしい。大きな脳を持つ人類は何種も現れ、最大の脳はネアンデルタール人が有していた。ホモ・サピエンスは2番目だ。進化は優れたものが勝ち残るのではなく、子孫を多く残した方が生き残る。
ホモ・サピエンスはネアンデルタール人や他の人類とも交雑し、彼らが数万年かけて進化させた形質(例えば寒冷地や高地への順応性)を手に入れた。ホモ・サピエンスが人口を増やし、生息地を拡大させたことでネアンデルタール人は居場所を失い、やがて絶滅する。
地球を埋め尽くすホモ・サピエンスの高い繁殖力と適応力は、今日に至るまで多くの生物を絶滅に追いやった。それは私たちの兄弟に対しても例外ではなかったらしい。
(NHK出版、税込み902円)