【眼光紙背】名著紐解く今の投資家
2024.04.18 04:30
ある地方銀行の元支店長が嘆いていた。顧客に運用を手ほどきしたら、「自分で勉強するから」と袖にされることが増えたそうだ。
投資の古典的名著が今また人気という。インデックス投資を勧める「ウォール街のランダム・ウォーカー」は1973年初版、全米だけで200万部超売れた。著者のバートン・マルキール米プリンストン大名誉教授は元証券マン。50周年記念版を手に取ったが、事例豊富で読みやすい。
一方、ベンジャミン・グレアムの「賢明なる投資家」はバリュー投資の名著。初版はなんと49年だが、著名投資家ウォーレン・バフェット氏の座右の書でもある。
〝再ブーム〟の背景が興味深い。投資の核心を突く内容が古さを感じさせず、市場の活況もあるが、SNSやネット動画で「投資系」と称されるインフルエンサーの多くが推薦したことで注目が高まった。しかも電子書籍でも読める。いわばネット上の口コミ、デジタルとアナログの融合ともいえる現象だ。
かつては投資を学ぶには、書籍や金融誌を探して紐解き情報を得るか、投資歴ウン年の知人や会社の上司先輩に指南を受けたもの。投資の学び方も様変わりの感がある。
自ら学ぶ投資家が増え、金融機関には難儀な時代だろうか。一概にそうとはいえまい。そもそも投資に無関心という相手ではない。参考にしている情報を耳にしたら、自分も調べてみる。あるいは「どんな内容か」と話を促してみる。案外、話題づくりのきっかけになるやもしれない。
ネットには真贋定かならぬ情報もあふれる。素性明らかで真摯な投稿主もいるが、誰でももうかるような口ぶりや広告への誘導、詐欺まがいのものもある。そこは金融機関の担当者の出番。危うい情報の見分け方も伝えられるだろう。
投資に絶対はないが、〝賢明なる投資家〟が増えれば、資産運用立国も近づく。投資家の資産とともに金融リテラシーも育てたい。
(編集委員 柿内公輔)
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