【推薦図書】『ドキュメント 異次元緩和―10年間の全記録』(西野智彦著)
2024.04.12 04:30
【推薦者】東短リサーチ社長・加藤 出 氏
マイナス金利の裏舞台
日銀は先日、黒田東彦前総裁が2013年春に開始した異次元緩和の見直しについに動いた。とはいえ金融政策正常化の道のりはまだ1合目に過ぎない。政策金利はゼロ%近辺に戻っただけであり、市場から日銀が購入した巨額の国債やETF(株式上場投信)の処分は何も決まっておらず、日銀の資産は異様に膨張したままだ。黒田前総裁が残した負のレガシー(遺産)は非常に大きい。
本書は日銀、財務省、政府関係者への綿密な取材をベースに、この異次元緩和が始まった経緯、その後の迷走、植田和男氏が新総裁に選ばれていく過程などを実に詳細に描いている。何人かの日銀関係者に本書の印象を聞いてみたところ、「かなり正確」という返答が返ってきた。
マイナス金利があんなにも反発を受けるとは思わずに導入されてしてしまった経緯や、地方金融機関に経営統合や経費削減を促す特別付利制度が早期に軌道修正された流れは、金融機関関係者には特に興味深いだろう。23年3月の退任前に雨宮正佳副総裁がYCC(イールドカーブ・コントロール)の終了を黒田総裁に何度も進言するが拒絶される場面もスリリングだ。今後の金融政策正常化の展開を推測していくうえでも本書は非常に有用と思われる。
(岩波新書、税込み1056円)
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