苦情に学べ DX化に必要な顧客利便の視点
2024.04.06 04:10
今回はリスク性商品とデジタルトランスフォーメーション(DX)に係る「苦情」について考えてみよう。昨今はどの金融機関もDX化に取り組んでいる。専門部署を創設したり、専門人材の育成に力を入れたりしているのは皆さんもご承知のことと思う。
リスク性商品に係る業務についても、この波は押し寄せている。タブレットを使用して顧客に説明するのは当然として、ある銀行のニュースリリースではタブレットを使用して顧客の記入・押印といった手続きを不要にしたり、投資信託の目論見書の電子交付を行ったりするといった内容も発表されており、すでにこうした取り組みは地域金融機関において行われている。
当然、顧客にとっても、また、金融機関側とっても購入時の事務負担の軽減や時間短縮といった点でメリットがあり、今後さらなるDX化が進んでいくと思われる。
しかし、こうしたDX化を推進していく際に、「顧客利便」の視点を踏まえた導入が行われているであろうか。
DX化を進めている金融機関へ寄せられた苦情に「タブレットになって確かに便利になった。購入までの時間も短縮された。しかし、従来に比べ行職員の説明等のスビード、特にタブレットを操作するスピードが速く、われわれ高齢者はただでさえタブレットには抵抗感があるのに、これまで以上に内容を理解するのが難しくなった。もっとゆっくりタブレットを操作して説明をしてほしい」とあった。
DX化は時代の流れであり、タブレット等を使用することは当然のこととなっていく。しかし、そのタブレットを操作するのも説明等を受け入れるのも人間である。DX化を機械的かつ画一的に行えば、ハード面の改善や効率化だけに注目が行き、そのハードを使用する行職員の視点がなければ真に顧客の立場を考えた販売にはならないのではないか。
具体的には、行職員と顧客(主として高齢者)のタブレットに対する慣れには大きく差があるし、そのイメージも異なる。
DX化による顧客からの苦情発生を防止するためには、こうしたことを前提に研修を行うことが必要。具体的には、行職員と顧客とのスピードの違いを感じてもらってから行うべきであろう。
こうした点も含め顧客への慮(おもんぱか)りが必要ではないか。
【金融監査コンプライアンス研究所代表取締役・宇佐美 豊氏】
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