【推薦図書】『論語物語』(下村湖人著)
2024.03.29 04:30
【推薦者】信託協会専務理事・川嶋 真氏
戦前から読み継がれる論語の名著
本書は、論語の章句をもとにした28の物語からなり、孔子と弟子とのやりとりを通して孔子の思想を説く。私自身の行動や発想も物語中の弟子たちと似たり寄ったりなので、孔子からの一言はぐさりと心に突き刺さり、反省を迫られる。
例えば、「瑚璉(これん)」では、「子貢問いていわく、賜やいかんと。子いわく、汝は器なりと。いわく何の器ぞやと。いわく、瑚璉なりと。」の章句をもとに、孔子が後輩の子賤を君子だと褒めるのを面白く思わない子貢が、孔子に「自分にも何か言ってほしい」と言ったところ、「お前は器だ」と言われた。「器」は才人の意味で、「君子は器ならずと」との章句が示す通り、孔子は器をいい意味では使っていない。案外に思った子貢が「なんの器ですか」と問うと「瑚璉だ」との答え。「瑚璉」は宗廟(そうびょう)を祭る際に供物を盛る器で、子貢は「器の中の器、人材中の人材」とうぬぼれかけた。そこに、孔子から「才人は自分の才能だけで生き、人を役立てることができないから、器のようなものだ」「年少者だからと言って、すべてに自分より後輩と思うな」と厳しい言葉が投げかけられた……。
このように、本書は論語の思想を具体的な場面設定でわかりやすく説く名著である。
(河出書房新社、税込み880円)
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