【推薦図書】『ルポ リベラル嫌い――欧州を席巻する「反リベラリズム」現象と社会の分断』(津阪直樹著)

2024.03.08 04:30
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ルポ リベラル嫌い――欧州を席巻する「反リベラリズム」現象と社会の分断(津阪直樹著)

【推薦者】三菱UFJニコス社長・角田 典彦氏
 足で稼いだ情報満載の迫真のルポ


今回は、朝日新聞の津阪直樹記者が欧州駐在時代の取材を基に執筆された「ルポ リベラル嫌い」を紹介します。副題の「欧州を席巻する反リベラリズム現象と社会の分断」の通り、近年、欧州で広がっているさまざまな反リベラルの潮流のなかで、一体どういった現象が起きているのかを、たくさんのインタビューを積み重ねることで、浮き彫りにした熱作です。
 筆者は、「一番不満を持っている人」を取材対象にするという行動指針に徹することで、チェコの日系人野党党首、財政危機に見舞われたギリシアの元財務相、緊縮財政に苦しむイギリスの地方都市のソーシャルワーカー、奇跡的な経済回復を遂げたポルトガルの政治家等々、幅広い取材相手から生の情報を引き出されており、今のEUの実態を高い臨場感をもって体感できました。
 実際、本書で初めて知る情報も多数で、その踏み込みに真のジャーナリスト魂を強く感じました。
 インターネットやチャットGPTなど、簡単に情報を入手できる手段は豊富になりましたが、「真の生きた情報」はやはり「足で稼ぐ」ことが肝心です。金融マンとしても原点となるスタンスを改めて強く認識できた熱作でした。


(亜紀書房、税込み2090円)

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