Nikkin金融講座 金融入門(19)年金について知ろう! あきらめや不安のその前に(2)

2024.03.01 04:01
金融入門
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 ◆共働きの「所得代替率」は低い?

前回は、国が標準的とみなす「モデル世帯」(夫が平均的な収入で40年間働き、妻は40年間ずっと専業主婦)に比べ、共働き世帯は公的年金を多く受給できる可能性が高いことをお伝えしました。老齢厚生年金の額は、生涯賃金におおむね比例して増えるためです。その一方で、共働き世帯の「所得代替率」はモデル世帯よりも低くなりがちです。所得代替率とは、現役時代の年収と比べた年金額の割合です。共働きの場合、現役時代の世帯収入が多い分、その水準と比較した年金額の減少幅は大きくなります。

 そのため、老後の生活水準をあまり大きく落とさずに暮らすためには、毎月一定額を取り崩せるように老後資金を蓄えておく必要があります。しかし、低金利の環境では預貯金や個人年金保険で運用しても、お金はあまり増えません。ようやく日本も利上げ局面を迎えつつあり、今後は預貯金や個人年金保険の利回りも少しは高まりそうですが、物価上昇を上回る資産運用を目指すには他の選択肢も探るべきでしょう。

 その有力な候補となるのが、通称「iDeCo(イデコ)」と呼ばれる個人型確定拠出年金や、「NISA(ニーサ)」の愛称を持つ少額投資非課税制度を通じたリスク資産への投資です。

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 ◆iDeCoの魅力は所得控除

NISAについては、本紙2月9日号に掲載した「人々を突き動かす『免税』の魔力(1)」で詳しく触れたので、今回はiDeCoの特徴について紹介します。iDeCoは、運営管理機関(銀行や証券会社など)を選んで専用口座を作り、運用商品に毎月一定額を積み立てていく制度です。原則60歳までは、運用したお金を引き出すことができません。そのため、現役時代に使う可能性があるお金はNISAで運用し、老後資金はiDeCoで運用するという使い分けが一般的です。

 個人が確定拠出年金として毎月支払う掛け金は所得控除の対象となり、所得税や住民税が減額されます。これは、NISAにはない大きなメリットです。毎月の掛け金をどの金融商品に投資するかは、加入者個人が選択します。投資可能な商品群を大別すると、銀行の定期預金や保険などの「元本確保型商品」と、投資信託などの「元本変動型商品」があります。

 その割合は2021年度時点で、前者が約45%、後者が約55%。元本確保型商品が半分弱を占めている結果、運用利回りは低水準にとどまっています。リスクを取って元本変動型商品に投資する人の割合を高めることが、資産運用立国の実現に向けた今後の課題となります。


 ◆投資はGPIFをお手本に

では、どのような投信で運用するのがよいのでしょうか。最適な資産構成を考えるうえで、公的年金の積立金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用方法が一つの参考になります。GPIFが投資する資産の構成割合は、「国内株式」「国内債券」「外国株式」「外国債券」にそれぞれ4分の1(25%)ずつ。これが、20年4月から採用されている基本ポートフォリオです。

 より高い利回りを目指したい場合は、比較的ハイリスク・ハイリターンの株式の割合を増やし、逆にリスクを抑えたい場合は、比較的ローリスクの債券の割合を増やのが定石です。一つの商品で世界中の株式や債券に分散投資できるバランス型投信というジャンルもあります。

 長期分散投資は、老後を迎えるまでに時間的猶予がある若年層ほど有利です。では、50代から始めたのでは手遅れかと言えば、必ずしもそうとは限りません。20年の法改正により、22年5月からiDeCoの加入年齢が「60歳まで」から「65歳まで」に延長されました。社会保険に入って働き続ければ、掛け金の積み立ても最長で65歳まで出来るようになりました。若者に比べると「近い将来」の受給開始を見据えながら運用することができ、なおかつ所得控除のメリットも享受できます。資金に余裕がある場合はNISAとの併用も含め、十分に検討する価値がありそうです。

 日本金融通信社編集局 国定直雅

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