【推薦図書】『人類の起源 古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」』(篠田謙一著)
2024.02.09 04:30
【推薦者】東和銀行取締役常務執行役員・鈴木 信一郎氏
データ分析で古代史を更新する
還暦を過ぎて以降、老眼鏡が手放せなくなったことや酒量低下の実感を契機として、私自身の来し方行く末と併せて人類の進化過程や今後に関心を持つようになった。本書では、分子人類学者で国立科学博物館長を務める著者により、人類(ホモ・サピエンス)の誕生から全世界への広がりについて最新の知見がまとめられている。
一昨年のノーベル生理学・医学賞受賞者が、古人骨からのDNA抽出・解析技術を確立した研究者となったことからも本書で解説される技術的背景の先進性を実感する。著者によれば人類のゲノム(ヒトを構成する遺伝子の最小限のセットを指す名称:その遺伝子を記述する「文字」に当たるのがDNA)は99.9%共通とのことである。
一方、世界ではさまざまな民族が、異なる生活様式や言語・宗教などで暮らしており、その多様性がコンフリクトの要因となり近時の地政学リスク顕在化に通じている印象もある。およそ200万年前からとされる人類(ホモ属)の悠久の歴史を将来世代に繋(つな)いでいくためにも、地球温暖化などグローバルな課題に対して、ほぼ同じゲノムを有する人類が共通の価値観で取り組むような叡智(えいち)を見いだせないものか、本書を読み終え改めて感じている。
(中央公論新社、税込み1056円)
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