ベンチャーデットとは?融資との違いやメリットについて解説!

2023.12.22 15:33
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ベンチャーデット

ベンチャーデットとは、スタートアップが利用する資金調達の仕組みの1つであり、資本と負債の両方の側面をあわせ持つ方法です。本記事では、ベンチャーデットの仕組みやメリット、融資との違いなどについてわかりやすく解説します。


ベンチャーデットとは?


ベンチャーデット(Venture Debt)とは、スタートアップの資金調達の一種であり、資本(エクイティ)と負債(デット)の両方の性質のある金融商品の総称です。


ベンチャーデットでは、銀行や信用金庫などの金融機関がスタートアップに対して低金利もしくは無担保の融資を行う一方で、スタートアップは金融機関に対して無償で新株予約権を発行します。資本に余裕のないスタートアップにとって有効な資金調達の手段であり、手続きが進めやすいなどのメリットがあります。


金融機関にとっても、新株予約権を得ることでスタートアップに対して資金を提供するリスクを抑えられます。また、通常の融資よりも規模の大きな融資を行いやすくなるとも考えられています。


これまでのスタートアップの資金調達は、資金を得ることと引き換えに、投資家に自社の株式を割り当てる方法が一般的でした。そのような方法は、貸借対照表において資本の項目が増えることから、エクイティ性のある資金調達と捉えられます。


その半面、ベンチャーデットは資金を調達することで負債の項目が増加するデッド性の資金調達です。返済期限のある負債ですが、従来の方法を補完する方法として、欧米を中心にベンチャーデットに注目が集まっています。


融資との違い

金融機関からの従来の融資は、企業の財務状況が問題ないか、固定資産などの担保があるかどうかといった点を確認して、融資の可否やその金額を決定します。大きく成長したいと考えるスタートアップは多額の融資を受けたいと考えるため、銀行の融資がうまく活用できないケースがありました。


ベンチャーデットの場合は、将来性に基づいて内容が決定されます。ベンチャーデットによって資金調達をした後、ベンチャーキャピタルからさらにいい条件での資金調達を狙えるケースもあります。


ベンチャーデットと金融機関からの融資は、スタートアップが資金調達を行う方法であるという点は同じです。しかし、他の資金調達の方法の補完手段となり得る点や、将来性が大きな判断のポイントになる点などに違いがあると言えます。


エクイティ投資との違い

株式発行は資本が増えることからエクイティ性の資金調達であり、その一方で、銀行などから借り入れるのは負債が増えるデット性の資金調達であると述べました。


そもそもエクイティとは「株式資本」などの意味のある言葉であり、エクイティ投資を受けることで株式資本の増加をもたらします。しかし、一株あたりの価値が薄まったり、株主の人数が増えてしまったりするデメリットを抱えています。


それに対して、ベンチャーデットはエクイティとデット双方の性質を持つ方法です。エクイティ性の資金調達のデメリットを抑えつつ資金を調達したいと考えるスタートアップにとっては、ベンチャーデットが適しているケースがあります。


ベンチャーデットのメリット


ベンチャーデットのメリットを3つのポイントから解説します。


コストが低い

株式を発行して資金調達する方法は、返済義務がないため、調達する時点ではスタートアップにとって好都合なように思えます。スタートアップのような成長段階にある企業は事業拡大のために利益を活用することが多いため、配当金を出さなくても構わないと考えられていることも、株式発行が魅力的な理由の1つです。しかし、将来的に株価が上昇することを考えると、大きなコストと引き換えに調達する方法であることがわかります。


ベンチャーデットの場合は、負債が生じる上に、通常の融資と比べると高い水準の金利で借り入れを行うことがあります。しかし、今後の株価上昇を考えると、将来的に必要になるコストは株式発行より小さく抑えられるメリットがあります。


経営への影響が小さい

株式発行によって資金を調達すると、株主が増えて、経営に支障をきたすことがあります。経営者の持ち株比率が低いと他の株主の意見を聞かなくてはならず、経営が思うように行えないなどの状況が発生する可能性もあるでしょう。


また、ベンチャーキャピタルから出資を受けた場合も、ベンチャーキャピタルからの出向があるなど、これまで通りの自由な経営ができなくなる可能性があります。


ベンチャーデットであれば、経営側が株式を多めに保有することで持ち株比率を一定以上に保ちながら資金調達を行うことが可能です。株式の希薄化を防ぎ、経営の自由度を保ちながら資金調達を行える手段と言えるでしょう。


資金使途が柔軟である

金融機関からの融資の場合は、調達した資金の使途を審査の段階で金融機関に伝え、その通りに利用することが求められます。本来の使途に違反すると、今後は融資が難しくなるなどのデメリットがあります。


その一方で、ベンチャーデットで調達した資金の使途は比較的自由度が高い傾向にあります。事業拡大はもちろん、設備投資や運転資金など、さまざまな用途に使うことが可能です。スタートアップは計画通りの経営を行うことが難しく、軌道に乗るまで時間がかかるため、調達した資金を自由に使えるのはベンチャーデットの魅力の1つと言えるでしょう。


ベンチャーデットを活用するタイミング

ベンチャーデットは将来性をもとにして資金を提供する手法であるため、スタートアップのメンバーが集まり、サービスをローンチした後に活用することが望ましいと考えられています。それ以前の段階では、投資をするのにふさわしいのかどうか、判断しにくいというケースが多いためです。


そのため、ベンチャーデットはある程度の成果が出てから活用することが望ましいでしょう。特に、エクイティ性のある資金調達を受けた後は財務状況がポジティブであり、企業の信用力が高い傾向にあります。スムーズに話がまとまる可能性が高いため、エクイティ調達直後の活用をおすすめします。


ベンチャーデットを活用する際の注意


ベンチャーデットを活用する際の注意点について解説します。


金融機関の融資とは審査方法が異なる

金融機関の融資は、企業の財務状況や過去の実績をもとに審査を行い、融資の可否を決定します。


それに対して、ベンチャーデットの審査方法は事業者によって異なります。ビジネスモデルや経営陣の将来性、今後の計画などを全体的にチェックし、資金提供の可否や金利をはじめとする条件を設定することが一般的です。


ベンチャーデットの審査方法は、金融機関の融資よりも、ベンチャーキャピタルによる出資に近いイメージと言えるでしょう。


返済義務が発生する

ベンチャーデットは負債であるため、利用する際は返済義務が生じます。返済する時期やその方法について、事前に検討しておくことが必要です。


また、ベンチャーデットの次にベンチャーキャピタルからの出資を受けようとする場合、出資した資金が事業拡大ではなく、ベンチャーデットによる負債を返済するために使われることを嫌がられるケースもあります。特に、新たに資金調達しようとする金額に対して返済するべき金額が大きすぎる場合には、ベンチャーキャピタルが出資に慎重になることも考えられます。


ベンチャーデットの利用方法によっては、次回の資金調達に影響を及ぼす可能性があることを抑えておきましょう。



【まとめ】

ベンチャーデットは資本・負債両方の側面のある資金調達の方法です。欧米ではすでに一般的な方法であり、日本でもベンチャーデットによる資金調達が今後広がっていくものと考えられます。


スタートアップ企業にとってベンチャーデットは、株式の希薄化を抑えながら資金調達できる点にメリットがあります。負債が生じる点や、次回以降の資金調達に影響を及ぼすかもしれない点には注意が必要です。


 


【執筆者】ニッキンONLINE編集部


 

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